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始まりの光9 |
ポッポ一世号に乗り着いた対岸で、少し先に行ったところでは、 モフモフの皆がいっぱいいて、その中心にはジェイと、クロエにウィルがいた。 アイツ、またなんか悪巧みしたな、と、華楠。 ほんと、変なところで人を引っ掛けるのがダイスキなんだ、コイツは。 「うっわ~!! 丸っこくてフワフワなのがたくさ~ん!」 ノーマが歓声を上げて、モフモフの中心へと走っていく。 みんなの視線を受けても気にしない。 ヤレヤレと言った感じで、後ろからセネルと華楠、ハリエットが続いた。 もっとも、ハリエットに至っては、目の前に居る生き物の愛らしさに、 ほとんど目を奪われた状態であるが、それでも、その目はあきらかに 緊張を色を示していた。 ガンバレの意味を込めて、その背中を、歩きながらさり気無く叩いてやる。 ハリエットは驚いたように華楠を見上げたが、華楠は知らぬ存ぜぬを決め込んだ。 「ハリエット!?」「クーリッジ!?」 ウィルとクロエの声が被って、 華楠は、なんとか上手くいったか、と息をつく。 「華楠さん! どうして、ポッポと一緒なんですか?」 「いやぁ、なんかもう説明もめんどいんだけど」 はっとした様子のジェイに、ハハハっと頭をかきながら笑って誤魔化せば、 丁度其処に、『みなさ~ん』と、高く愛らしい声が響く。 ポテポテと走ってきたのは、緑と赤のモフモフ族だった。 「村に遊びに来てくれたキュ?」 「押忍!だキュ。 また会えて嬉しいキュ!」 「華楠さんも、お久しぶりだキュっ」 「わぁっ。ピッポ君、キュッポ君、久しぶり~!!」 走ってきたのは、最近では会っていなかったキュッポとピッポの姿。 懐かしくて、思わず走りより抱き上げた。 相変わらず、フワフワモコモコで気持ち良い。 「・・・キュッポとピッポも、この人たちと知り合いなの・・・?」 ただただ状況の分かっていないジェイは驚いた様子で、 あ、自分も少し驚いた方が良かったか・・?と、華楠は少し焦る。 だって、知ってるんだもんさ。 セネルたちがピッポ達を知っていること。 ピッポ達の話を聞いたジェイは思案に沈んでいるようで、 それから、呟くように言った。 「なるほど、そんなことが・・・。 3人が、お世話になりました。」 そして、先ほどとは違った態度で深く頭を下げるジェイ。 なんだか、まるで保護者のようだな、とか、 その様子を見て思って、クスリと笑う。 気付いたらしいジェイに、睨まれた。 「もはやお礼の言葉も無いキュ。 キュッポ、キュッポ・・・・・・・キューーーーーーー!!!」 キュッポが突然気勢を上げて、おなかの上で貝を割り出す。 ジェイが、キュッポは興奮するとホタテを割るクセがあるのだと説明した。 なんだか、みんなが心の其処で突っ込んでいる声が聞こえた気がした。 ラッコだから・・・・なんだろうな、多分。 「皆さんを村にお連れしたいキュ」 「そうだね、ここで立ち話するのもなんだし。」 「よぉっし、そうと決まれば、 私も久々に腕を振るってやるかな!」 「気合を入れすぎて、下手なことしなければ良いんですけどね」 「なんか言った?」 「いえ何も。 こちらへどうぞ、皆さん」 答えたジェイはニコリと微笑んで見せて コノヤロ・・とか思いつつも、こんな風な会話は久しぶりで、どこか安堵すらも 思える自分が憎らしい。 「おい・・・」 ウィルがハリエットに声を掛けようとするのだが、 ハリエットはその場から逃げるように走って、ポッポの手を引くと、 真っ先に村の方へと向かってしまった。 ポッポは、何がなんだか分かっていないようだったが。 ウィルの制止の声も聞かずに言ってしまった。 複雑そうな顔で見つめるウィルに、ポッポが一緒だから大丈夫だ、とジェイが宥める。 多分、そういう事じゃないんだと思うけれど。 「目的は一緒です。 あとで、ゆっくり話しできますよ、ウィルさん」 華楠のその言葉に、セネル達は何事か分からないと首を傾げたが、 ウィルだけは、驚いたように目を見開いた。 「君達は一体・・・何者だ?」 踵を返し行こうとするジェイと、それに続こうとする華楠。 そんな2人を引き止めたウィルの言葉。 「僕の名前を、皆さんは既にご存知のはずですけどね。」 その言葉に、それぞれがぞれぞれ、互いに顔を見合わせた。 その表情は、驚きと言うよりは、核心を得ている事を確認するかのような・・・ 振り返って見せたジェイは、いつもの彼だった。 「ぼくがジェイです。はじめまして。」 ああ、これでみんなの前で彼の名前が呼べると、息をついた。 先ほどから、ウッカリジェイの名前を呼んでしまいそうで冷や冷やだったのだ。 まさかそんなヘマしたら、あとが怖いのだけれど。 「ちなみに、こっちはご存知の通り、街で歌姫をしている華楠さんです。 事情がありまして、モフモフの村で、家政婦をしてもらってます」 「家政婦!?」 「あらためまして、どーぞよろしく。」 なんだか、この世界に来て初めて、歌姫以外の職業を名乗った気がする。 すごく、新鮮な気分だった。 「さ、じゃあお互いの素性も知れたことだし。 ハティと話もしたいんでしょ?ウィルさん」 「あ、ああ・・・」 ニッコリと笑って言ったら、なんだかすごく困ったように頷かれた。 ― to be continue... |