運命の再会5 |
ポッポの工房を出た瞬間、目の前の湖から出てきた 赤い海坊主に、ぶっちゃけビビる。 「モモモモモモーゼスウウ!!?」 「ん?おうっ何じゃ、嬢か。 具合はもうええんか?」 「あー!!! 良かったあ、起きれたんだあ!!」 「傷は平気なのか? 熱もあったようだったから、心配したんだ。」 「ノーマ、クロエ、ありがとう。 もう全然大丈夫だから、心配しないで!」 「ってワイは無視かい!!」 「当たり前でしょ。」 誰のせいであんな事になったと思ってんの。 言ったらうぐっと言葉に詰まり・・・ そうこうしていたら、もう一人、 湖の中から白い海坊主。 ぷはっと息を吐く音が聞こえる。 「あっれえ?セネセネ、まだ泳いでたんだあ?」 「ああ、まあな。 目が覚めたのか、」 「あ、うん。 助けてくれたの、セネルだって?ありがと。」 「ああ・・いや。」 セネルは言って、服の水を絞りながら近づいてくる。 ・・・心なしか様子が可笑しい。 「・・・どうかした?セネル」 「え?あ、いや・・何でもない。」 「そうは見えないんだけど・・・」 だって、あからさまに、何か言いたそうな顔をしている。 そんな顔をされたら、此方だって気になるのだ。 「なあ、。」 「ん?」 「いや、えっと・・・熱は、もう下がったのか?」 「あ、うん。大丈夫。 ごめんね、心配掛けて。」 「・・・いや、それなら、良かった。」 だから何なんですか一体その態度は。 そんな様子を見てか、スススっとノーマが背後から近寄ってくる。 明らかに、何か楽しんでる様子で。 「おんやあ?セネセネってばもしかして、 珍しく髪下ろしてるにときめいちゃってたり?」 「はあ?」 「ん?髪??」 何の事? 思って髪に触れ、ノーマの言ったことに気が付いた。 普段縛っている髪の毛が、下りている。 一緒に付けていたリボンもない。 「え・・あ、えーー!!? な、なんで!!?」 「気付いてなかったのか・・・」 「気付いてないよ!いつからなかった?」 「んー、確かセネセネがを陸に上げた時には もう髪の毛下りてたよね?」 「ああ。・・・あの時の衝撃で 水の中に落ちてしまったのかもしれないな。」 「ええ!!?」 ピッポ君たちから貰った大切なものなのに!! 「私、ちょっと水の中見てくる!!」 「あっ、ちょっと待て!!」 慌てて水に飛び込もうとしたら、腕を掴まれる。 触れたセネルの手が意外と熱く感じて驚いた。 一瞬目を見開いてセネルを見ると、 セネルは「あ・・・」とか口の中で呟いて、慌てて手を離す。 「お前は、止めておいた方がいい。 リボンなら、俺が探してきてやるから。」 「へ?何で?私、一応泳ぎは出来るよ?」 「いや、そうじゃなくて・・・」 「いやーんもしかしてセネセネ、に惚れちゃったあ?? だからきっと心配なんだってえ」 「なっ・・・」 「「はあ??」」 ノーマの突拍子も無い発言に、思わず声を揃えた。 いきなり何を言い出すのかと。 セネルは、目一杯「違う!!」と否定する。 ・・・毎度の事ながら、そんな力いっぱい否定されたら流石に傷付く・・・。 「そうじゃなくて、此処の水、少し海水が・・・」 「海水??」 「あー・・・もう良いから、とにかくお前は入るな!! 病み上がりなんだし、俺が取ってくるから!」 「え?あ、ちょ、ちょっと!!」 止める間も無く、セネルが湖の方に走り出し、水の飛沫が上がる。 変なの、ととノーマは顔を見合わせた。 何か言いたそうに人の事を見たり、海水がどうとか・・・ シャーリィじゃあるまいし、なんでそんな・・・ 思うけれども、胸の内の靄が消えずに眉根を寄せる。 ・・・そう言われてみれば確かに、最近、水に入ると熱が出る事が多い。 ・・・・・まさかね? 「うーん。春だねえ。青い春春」 ノーマの声にハッとした。 どうも、考え込んでいる所を勘違いされたっぽい。 「ちょ、ち、違うってノーマ!! クロエも、誤解だからね!!?」 「なっ何で私に言い繕うんだ!!」 「いやだってまあほら、ね!!? とにかくそんなん全然ありませんから!!」 「まあまあ、良いじゃん良いじゃん。 いや〜良いなあ、あたしも青春したいなあ」 「だーかーらー!!」 違うってば!! 言い合う最中、フと聞こえた鼾に、 ノーマとクロエ、は振り返る。 濡れた体のまま、地面の上で大の字に寝てるモーゼスが見えた。 「・・・まあ、こん中じゃ青春、 中々難しいと思うケドねえ・・・」 「・・・同感だ。」 「は・・ははは・・・は・・・」 「ポッポ三世号・改、完成だキュ! キュキュキュ!!」 一晩開けてすぐ、目が覚めると湖に移された潜水艦が見えて 一同はすぐに準備をした。 がジェイに近寄ると 流石に目の下に隈が見られる。 「・・大丈夫?ジェイ。 目の下、少し隈になってるけど」 「流石に徹夜で細かい作業でしたからね。」 言って、小さくあくび。 同い年なのだが、申し訳ない。 そうやっている所は少し可愛いと思ってしまう。 「それより、昨日は随分と楽しそうでしたね?さん」 「ん?楽しそうって?」 「いえ、作業中に賑やかな声が聞こえた物ですから」 「・・・あ、うるさかった?」 「それも在りますけど・・まあ、気付いてないなら良いです」 言って、ジェイは踵を返す。 え?あれ?なんか機嫌悪い? 何かしたっけな?昨日?? 思い返してみるけれども、心当たりが全くない。 ・・・あれえ? 「ああ、それと、気を付けて下さいよ、さん。」 「うん?」 「貴女は、ご自分のブレスしか効かないんですから、 体力には充分注意してください。 薬系の物は、多めに持ってくださいよ。」 「あ、りょうかーい。ありがと」 言ったら、何でお礼を言うんですか、と 憮然とされてしまった。 ・・・そんな顔しなくたって良いのに・・・ そんな会話をしていると、一同は潜水艦の前に集まっていて、 ジェイとも、其方へと近づいて行った。 「皆さんのお陰で、立派な排障器が付きましたよ。 さんの提案で、もし水が漏れ入った場合も しばらくは水を排出出来るはずですし・・・ あとは、操縦者の腕次第です。」 それから、ニッコリと笑って 皆さんの覚悟と準備が出来たら言ってくださいね、と。 セネルが一同を見渡し、皆が、力強く頷いた。 「・・・出発しよう!」 |