白いエリカの彩る夜に
動乱の大地7












別に、驚かなかったわけじゃなけれども。

さして驚いたわけでもない。

あれだけ怪しむべき点がいくつもあれば、
流石の自分でも予想は付く。


付く・・けども・・・・・



「どーしてアンタが此処にい・ん・の・よ!!!!」


煌髪人とよく似た、少しクセのある金の髪。
けれども決して見間違う事はない、琥珀色の瞳。

自分がこの世界に来た時、同じ室内にいた幼馴染兼親友。

が何故此処にいる!!


「あー!その声は!?
 起きれたんだ?久しぶり!元気だった?」


当の本人はヘラヘラと笑って手を振っている。

この緊張感を欠片も孕まない笑顔!

間違いなくだ。

フラフラ覚束ない足取りで近づいてくる。



「久しぶり!・・・じゃなああぁい!
 なんで!いや、眼鏡とか拾った時から
 なんかもう既にそうじゃないかとは思ってたけど!!
 ワルターの話聞いた辺りからちょっと核心付いてたけど!!
 皆の話聞いて絶対だとは思ってた・け・ど!!!
 なんで!どーっして水の民の服を着て、のほほんとこんなトコいんの!!」


「あ、わたしの眼鏡、が拾ってくれたんだ?ありがとー。」


「観点そこじゃないでしょーが!!!」


ああもうこの子は・・・

こういう時にこの子の相手すると、滅茶苦茶疲れる。


まず会話がかみ合わないんだから。


「えー、観点其処でしょ?
 だって、私ほど度が強い眼鏡って
 此処じゃ材料が足らなくて作れないって言うんだもん。」


「そうなんか?嬢ちゃん。」


「そうなんですよ。
 わたし、もう殆ど視力がない状態なんです。
 だから眼鏡がないともう動けなくて動けなくて・・・」


「ああ、だからあややん、ずっと足元フラフラだったんだあ」


「もー、ワルターさんにはすぐ転ぶって怒られちゃうし・・・」


「っていうか、本当に私が知らない間に
 皆さん既にお知り合いなワケね・・・・」



なんか軽く泣きたい気分なんですけど、なんだろう、コレ。


「って言うか、みんなから、なんて聞いてるわけ?」


と同じ国の出身で、の幼馴染だと聞いているが・・・」


さんと同じ国・・・ですか。」



其れを聞いただけで、今のジェイは分かってくれる。
意味深気に呟いたジェイに、あー、そういえばさ、とノーマ。


「結局の所、とあややんの国って、何処なワケ?」

「あ、それはですね・・・」

「あーっと、そうそう
 眼鏡だったっけ?うん、ちょっと待ってね、
 確かバックの中に入れておいたと思ったから。」

「あ、本当に?良かったー。
 これで少しは動けるよ。」


不自然に話を逸らした

気付いてか気付かずか、は手を打って喜ぶ。


「・・・これ、だけど。」

「ああ、そうそうコレ。
 こんなにボロボロなのに、よく分かったね。さっすが!」


「・・・・・ねえ、それマジで付けんの?」



バックから出した其れをに渡せば、は受取って
自らの目元に持っていく。

けれども其れは、レンズは割れているしフレームは曲がっているしで
もう相当ボロボロだ。


「うーん・・背に腹は変えられないでしょ。
 それに、わたしだってみんなの顔、ちゃんと見てみたいんだよ」

「・・・私の事も、ほとんど声だけで判断してる?」

「うん、大体は。」


言って、ヘラっと笑う。


ああもう、わかりましたよ。


がボロボロの眼鏡をつけると、みんな僅かに顔を引き攣らせて。

はゆっくりと一同を見渡して、ほうっと息をついた。

なんだか、あまりに見事にボロボロで、
ある意味パーティグッズの一つみたいだ。


「あー、やっとこれで転ばずに済む!良かったあ。」


嬉しそうに笑うけれども、なんだかどうにも不釣合いだ。

どうした物なのか、正直な所少し困る。


「・・・とにかく、ちょっと二人だけで話そう、
 もう外に出ても平気ですよね?」


「ああ、構わん。
 ただ、敷地の外には出てくれるなよ。」


「わかりました!
 ・・・そんな顔しなくても、後でちゃんと話すよ、ジェイ。
 今は作戦会議、よろしくね!」


「貴女によろしくされなくても、ちゃんとやりますよ。」


「うっ・・・ジェイの捻くれモン・・
 行こ、!」


「あ、!ちょ、待って・・」


踵を返して走り出した

其れを追おうとしたは・・・・


「うわあ!!」


「んぎゃっ!?」



を巻き込んで、すっ転んだ。


「うーん・・・」


そんな2人のやり取りを見守りながら、ノーマが喉の奥で唸る。


「やあっぱ、変な感じ。」

「お前、まだ言ってるのか?」


そんなノーマの声を聞いて、セネルが呆れた様に問う。


「だあってさー、セネセネも、なんかそんな気がしない?」

「それは・・・まあ・・・」


言われてセネルは、2人が出て行った扉の向こうを見やった。


初めは、年齢不詳でよく分からないやつ。

次は、ジェイと知り合いらしいよく分からないやつ。

その次が、なんか少し頼りになる気もするよく分からないやつで。


あの地底湖のあとは―・・・


「本当に、不思議な奴だな、は。」


考えるでもなく、そんな言葉が、口を付いて出た。