「ジェイ!」 「・・さん・・・」 ジェイの後を追いかけて呼べば、泣きそうな顔をするジェイが居て 走り寄ったは良いものの、言葉に詰まってしまう。 「頼みたいキュ・・・」なんて言われても、正直な所 何をどう頼まれたらいいのかもわからないし、掛けるべき言葉も分からない。 「えっと・・・」 「さん、僕は・・・」 フと視線を落として。 男の子のクセに長い睫毛が、紫暗の瞳に影を落とす。 「僕は、間違ってるのかな・・・」 それは、独り言とも取れる言葉で、けれども 確かに自分に向けての問いかけだった。 は苦笑して、首を緩く横に振る。 「間違っちゃいないよ。・・・・多分ね。 ジェイがモフモフのみんなを大切に思うことも モフモフの皆が、遺跡船を大事に思うことも。」 たださ、と続けて、ジェイがゆっくりと自分の姿を瞳に捉える。 「ジェイのやり方は多分すっごい真っ直ぐで、 言えば多分、すっごい不器用なんだと思う。 間違ってないけど、もう少し余裕持っても良いんじゃないかな?」 それはきっと、彼にとっては難しいことだとは思う。 愛情に不器用な彼だから、きっと彼等の事になったら どうしようもなく心配になって焦ってしまう気持ちも、わかるんだ。 「愛情は、押し付けたらただの束縛で、独りよがりになっちゃうよ、ジェイ。 ・・・なんて、これはきっと、言わなくてもジェイ自身が分かってるか。」 言って、ほんの少しだけが笑う。 きっと、この意味をジェイ自身が分かっているから、 だからきっと、余計に焦ってしまうんじゃないかって。 けれども、こんな切羽詰ったような顔をされたら、 気休めでもなんでも、言いたくなってしまうから―・・・ 「余裕・・・ですか。」 「うん。余裕。」 「・・・・・。」 ジェイはゆっくりと息をついて、それからに近づくと そっと手を伸ばした。 長い指が、頬をごしごし擦る。 「?」 「・・・人、手に掛けましたか?」 それは、率直な問いかけだった。 思わず肩を震わせて、動揺しないように努力したけれども ジェイを誤魔化しきれない事なんか、重々承知だった。 「・・・・うん。ああ、まだ血が付いてた? さっきクロエにもそれやられたんだけど」 「ええ、まあ。 ・・・大丈夫、ですか?」 うーん・・・さっきのモフモフの話はどうしたんだろう? いきなり話しぶっ飛んでアレ?とか思いながら、 けれども不思議と、ジェイと話したことで、さっきまでの暗鬱な気持ちも ほんの少し晴れてる自分がいて・・・ 「・・・大丈夫。ちゃんとやるよ、私。 最期まで、みんなに着いて行くから。」 真っ直ぐな目で、そう答えた。 ジェイは、人の命の重さを誰よりも知っている。 そして、奪ったときの苦しさも。 だからこその問いかけだと分かっているし、 だからこそ、この事に対して肩肘を張る必要もない。 出来る限りの真摯な気持ちで、受け答えた。 ジェイは一瞬逡巡して、けれどもすぐに 珍しく素直な笑みを、返してくれた。 そして、少し困った後に、殆ど呟くような声で、言うのだ。 「・・・さっきは、すみませんでした。」 |
動乱の大地15 |
キュッポ達が他のモフモフ族にジェイの言葉を伝えに行くと ジェイとは再びセネル達と合流して。 「そういうワケで、不本意ではありますが、宜しくお願いします。」 「あ、ああ・・・」 ジェイの変わり身様と唐突な展開に付いていけてない人、約5名。 多分自分だって、何も知らなかったらアッチの側だ。 ・・・あれ、なんか微妙に嬉しいような・・・ 「ケッ、ワイは認めんぞ!」 モーゼスが口を尖らせて言う。 と、隣のウィルから鉄拳が飛んだ。 そんなわざわざ、手が届きやすいようにお隣に居る事ないのにねえ。 「よろしくな、ジェイ」 「・・・はい。」 「あはは、なーんか変な感じだなぁ」 ジェイがこれから行動を共にする。 今までにはなかったことだから、すごく不思議だ。 ジェイはいつものからかう様な嫌味な目でを見ると 「僕の前で、あまり酷い戦い方をしないで下さいよ、さん」 「うーるさいな、ジェイこそマヌケな姿曝さないでね! 一応、師匠なんでしょ?」 「さんじゃあるまいし。 まったく、出来の悪い弟子を持つと気苦労が耐えませんよ。」 「なーんーだーとーーーー!!」 うきゃー!とか地団駄踏んだら、ジェイがカラカラと笑って。 セネルたちにも、微妙に笑われた。 とりあえずは、主戦場突破。 目指すは艦橋最上階、だ。 「苦無!」 ジェイの放った小刀がメレンゲにぶち当たり、 メレンゲはその刺さった刀の切っ先から発光して、砕け散った。 コロリと光るスカルプチャを見つけて、ジェイは其れを拾い上げる。 ジェイが仲間になり、現在、艦橋に向かう前に救護テントに向かおうという所。 ゲームでは何てことない距離だけれども、やはり実際に歩くとなれば 距離は遠くもないがそれなりで。 間にはやはり、戦闘が入ったりもする。 それでも彼の戦力が加わって一同の進みは中々に楽になり、 自信、後衛で術や回復に打ち込むことが出来るようになった。 「へ〜ジェージェーもやるじゃん!」 ノーマが意外そうに言うのに対して、ジェイはポケットに手を突っ込んで 当然とでも言いたそうに目を閉じた。 「まあ、モーゼスさんよりは皆さんのお役に立つと思いますよ。」 「なんでワイの名前を出すんじゃ!」 「穴だから?」 「ワイは穴と違うわ!」 「え、違うの?」 「嬢〜〜〜!!」 思わず会話に突っ込めば、モーゼスが戯れるように首に腕を掛けて 軽く首を絞めて懲らしめる真似をする。 もちろんただの遊びだから、苦しかないが。 「あははははモーゼス穴〜!!」 「穴言うな!」 あーおもしろい。 目に涙溜めて笑う。 「ん?どったの?ジェージェー」 「・・・いえ、さんは、いつもあんな感じなんですか?」 そんな様子を、少し意外そうに見ていたジェイにノーマが問えば やはり意外そうな問いかけ。 ノーマはん〜・・と口元に手を当てる。 「まあ大抵あんな感じだよねぇ。 あー、でも特にモーすけと絡んでる時が多いかな」 そっれがまたおもしろいんだわ〜とカラカラ笑うノーマに ジェイは「そうですか、」と、結構素っ気無い返事で。 「ありゃ、もしかしてジェージェー、本気で妬いちゃってたりするわけ?」 「・・何度も言ってますが、 どうして僕がさんの事で妬かなくちゃならないんですか。」 「どうしてって、そりゃあ惚れてる女に違う男が引っ付いてたら いっくらジェージェーでも妬くでしょうよ。」 「いつ、誰が、誰に惚れたのか、詳しく説明して欲しいですね。」 ジェイが不機嫌に睨んで返す。 ノーマが「自覚ナシ?」とか言えば、ジェイは尚の事不機嫌で。 「そもそも、今はそう言った事には興味がありませんので。」 「いやあ、ジェージェーも思春期なんだしさあ いつどっからそ〜言う感情出てくるかわかんないじゃん?」 「仮にそうだとしても、さんと言う時点で対象外です。」 ジェイがそう言うのと同時にガキン!ゴツン!!と硬質な音。 ウィルの鉄拳が、とモーゼスの脳天に直撃していた。 「お前達は!場を弁えんか馬鹿者が!!」 「何さ〜。ウィルさんだって、さっきドラゴンについて 熱く語ろうとしてたじゃないのよ〜」 「そうじゃ!人の事言えんぞ、ウィの字!!」 「ぐっ・・あ、あれはだな・・・!!」 ぐおぉ・・とか言いつつもウィルに反撃すると それに便乗してモーゼス。 ジェイはフンと鼻で笑った。 「さんとモーゼスさんの方がお似合いなんじゃないですか?」 「ふ〜ん。まあ、ジェージェー公認ならい〜んじゃない? モーすけも浮かばれる思いでしょ〜よ。」 「?」 ノーマの物言いが、少し気になった。 小首を傾げれば、「あ、気付いてたんじゃなかったんだ」と。 「多分、モーすけ惚れてるよ、に。 まあ、本人同士はまったく気付いてないっぽいけどね〜」 どーせモーすけの一目惚れでしょ、とノーマ。 その言葉に、ジェイが目を剥く。 「何だかんだで、ウィルっちもお気に入りだしね。 セネセネも結構の事は気に掛けてるっぽいし・・・ でもこっちはちょっと事情ありっぽいかなあ〜。 まあ何にしてもこのメンバーの中でも変わり者っぽいし、気になりはするよねぇ」 ノーマの鋭い考察を聞いて、ジェイが一瞬呆ける。 からかう様に笑うノーマが気に障ったが、文句を言う前に 再びの声が遮った。 「わーん、クロエ〜!ウィルさんがいじめるー!!」 「え、わ、私に泣き付くのか!?」 「だってー。セネルは明らかに 『俺を巻き込むな』って顔してるんだもんさ。」 「いや、だって嫌だろ、アレは・・・」 「いーじゃんいーじゃん。 私の身代わりになって ![]() 「ぜーったいに、嫌だ。」 「なあ、シャンドルがほとんど気を失ってるんだが 助けてやらなくていいのか・・・?」 仮にも戦場だというのに・・・ やんややんやの大盛り上がり・・って、駄目だろおい。 主戦場は抜けたと言ったって、まだまだ油断はならないんだから・・・ 「ねー、ジェージェー、」 呼びかけられて 「何でもないならそれでい〜けどさあ ボケーっとしてると、モーすけに取られちゃうぞー」 「・・・ですから、何かする、しない以前の問題です。」 しつこいですね、貴女も。とジェイは軽く不機嫌モード。 「さん、余り騒いでいると敵兵に見つかります。 いい加減馬鹿な事してないで行きますよ。」 「私だけ!?ねえ私だけなの!!?」 この状況見て!? が言うけれども、ジェイは聴く耳持たずで、 なんか色々惨事になりつつもある一同の間を歩く。 その様子にウィルが咳払いをして、「とにかくは救護テントに向かうぞ」と 改めて指示を出した。 ノーマが頭を掻く。 「こりゃ・・・ も色々苦労するねえ・・・」 「どうかしたのか?ノーマ」 「ん?あー、いやいや。こっちの事よ。」 「お前達、いい加減急ぐぞ!」 「って、今騒いでたのはウィルっち達でしょ〜が!!」 あたし何もしてないじゃん!! 言うノーマに、は軽快に笑っていた。 ![]() ノーマの考察。 珍しくちゃんとキャラの絡みがあったりとか・・・ でも戦場でソレはいいのかと言うお話でorz ジェイが仲間になったばかりだから、書いて置きたかったんですorzorz ![]() |