のテルクェスと、謎の吹雪によって望海の祭壇の入り口に運ばれ、 そこで合流したグリューネ。 なんだか噛み合わない会話を交わしたが、ワルターにより仕向けられたカカシ兵と そのカカシ兵との戦闘により爪術が使えなくなった事が判明し、 一先ずは街に戻ろうという事になった。 しかし今戦えるのは、爪術を取り上げる事の出来なかっただけ。 先ほどから戦闘ぶっ続けってのは、まあいい。 いや、あんまり良くないんだけども、 実は結構きつくてぶっ倒れそうとかあるんだけど まだいいよ。まあいいよ。 いいけどさ・・・!! 「・・・・・可笑しい。」 「何がですか?さんが可笑しいのは元からですよ。」 「・・・・うん、ごめん知ってるけどさ、そういう事じゃないのよ言いたいのはね。」 うん、違うんだな、これが。 そりゃもう色々説明付かないくらいにおかしいけどさ。 今言いたいのは、何でフツーの一般人な自分が、 テルクェス出しちゃったのかってお話でしてね! 何がどうなってるんですかね・・・! 「もう絶対アレだ、体質変化とか起こしたのよ自分、有り得ないあははははは・・・」 「わー!がぶっ壊れたーーーー!!!」 「・・・しばらく壊れさせておいてやれ・・・」 色々疲れてるんだろう。 うん、ありがと、ウィルさん。 ちょっと哀しいけどね、それもね、うん。 |
打ち捨てられた地で1 |
どうにかこうにか街に駆け込んで、流石に疲れて街の真ん中で息を整える。 「何とか逃げ切ったか・・・」 「あのカカシ、そこかしこから出て来るんだもん。 死ぬかと思ったよ・・・・」 「嬢だけでも、爪術が使えて助かったわ・・・」 「不本意ながら、モーゼスさんに同意します。」 「あたしゃブレスの使いすぎで死ぬかと思ったけどね・・・」 ぜはぁ・・・と息を吐き出して、。 改めて街の中を見渡せば、 爪術が使えなくなったのは自分たちだけではないようで、騒然としていた。 「あにき・・・!!」 「!!」 その時、街の奥から声がして振り返る。 緑の髪の青年と、もう一人、見慣れた少女がこちらに走ってきた。 「・・・!無事で!!!」 「チャバ!血相変えてどがあしたんじゃ!!」 マウリッツの穏やかではない話を聞いて、内心気が気ではなかったのだが 良かった、怪我はないようだ・・・。 「私は・・・ワルターさんが、逃がしてくれたの。」 「ワルターが?なんで・・・」 「儀式が終わったら・・・私は見せしめとして殺されるからって・・・ ・・・・生きろって言って・・・逃がしてくれて・・・・」 言って声の語尾が震えていた。 けれども、すぐに首を振って、毅然とした態度で振り返る。 「街の外で呆然としてたら、山賊の皆さんが助けてくれて・・・」 「街の中に、ガルフが入ってきたんです。 そのガルフがオイラ達をこの人ントコに連れてってくれて・・・」 「ガルフ・・・?」 「ワルターさんが、導きの森の番人とか・・・何とか・・・」 その言葉に、ジェイと2人、顔を見合わせた。 「導きの森・・・良かった、みんな無事なんだ・・・!」 「あれ以来全く姿を見ていませんでしたからね。」 それからはチャバと呼ばれた青年を見る。 ・・・そっか、モーゼスの子分さんたち。 無事、だったんだ。 よく考えたら、自分まだ、彼等が生きてた事聞かされていなかった。 「・・・友達がお世話かけました。」 「あ、いや。」 軽く会釈をすると、チャバは驚いたように頭を掻いて。 それから、モーゼスに促されると、再び慌てたように話し始めた。 「そ、そうだ兄貴! それが、みんな爪術が使えなくなって・・・!」 「何じゃとォ!?」 「おいら達だけじゃありません! 街にいるほかの爪術士たちも同じです!」 その言葉に、一同は顔を見合わせて、やがて、 モーゼスが自分たちも爪術が使えなくなったという事を話すと、 チャバが愕然とした様子で「そんな・・・」と呟いた。 「情けない声出すな。ワイとギートが何とかしちゃる!」 モーゼスは、なるべくいつも通りにニっと笑って、 親指で自らの事を指差した。 ギートもまた、同じくして遠吠えを一つした。 それから、モーゼスが振り返って、 子分達を落ち着かせるために野営地に行ってくると告げた。 「あ、あの、私も行きます。」 「?」 「私、山賊の皆さんに助けてもらってからお世話になってて・・・」 「・・・ジェイ、行って来ても良い? から、話も聞きたいし。」 「・・・わかりました。 後で僕もそちらに向いますから、なるべく動かないようにしてください。」 「わかった。」 ジェイの了承を得ると、と、モーゼスとチャバは顔を見合わせて。 野営地のほうへと、走り出した。 モーゼスが、子分たちの事を諌めている。 そのすぐ横の時計の様な形をしたオブジェに寄りかかりながら はから、話を聞いていた。 「そっか・・・ワルターがねぇ。」 「うん・・・・。」 「ねえ、ぶっちゃけ聞いてさ、 あんた、ワルターの事好きなんでしょ?」 「うん。」 「だーよねぇ、まあそうだよねえ、こうなっちゃったら。 ワルターもワルターで、の事好きっぽいし・・・ なんてゆーか、不器用ね、あんた等も。」 「・・・人事ね、。」 「まあ、人ごとだからね。」 しょうがないじゃない。 言うを、が恨みがましそうに見る。 が溜め息をついて、両の手をあわせる。 「全く・・・なんでこんな事になったんだろうね。」 「ん?」 「私達がこの世界に来た理由。・・・っていうか、私はおまけかな。 話聞いてると、呼ばれるべくしてきたのはっていうか・・・」 「ん〜・・・・そう・・・でもないんじゃない?」 「そお?」 「そお。」 肩を竦めて答える。 「私が来たのが偶然じゃないってんならさ、 多分、が来たのにだって、何かしら理由があるんだと思うよ。」 「だったら私も、爪術とか使えればよかったのに・・・・」 「にはの役割があるって事で。」 「・・・適当でしょ。」 「当たり前でしょ、知らないもん。」 自分たちがこの世界に来た理由とか、分かってるなら、なんて楽な事だか。 分からないからきっと、こうやってアタフタして困ってるんだ。 そしてきっと、どんなにしたってそれは、求まる答えじゃないのかもしれない。 それは、生きる意味を問うのと良く似ている。 掴もうとしても、掴む事のできない答え。 「なんか、・・・・」 「ん?」 「また、柔らかくなったね。」 「へ・・・?」 の言葉に、が驚いたように見た。 が、懐かしむような目で自分を見つめる。 「中学の時からは勿論だけど、その後から見ても。 、すごく柔らかくなった。」 「そ、そう・・・?」 「うん。一時期から見たら信じられないくらい。 口調も、目付きも、明るくなったよ。」 「・・・・そっか。」 が、微笑った。 少し困ったような、彼女の笑み。 手を組んで空を仰ぎながら、言う。 「みんなのお陰、かもね。」 「ジェイさん?」 「うん。ジェイも、セネルも、クロエもノーマも。みーんな。 みんな、本音でぶつかるしかない様な相手って言うかさ、 一人で壁作って、勘繰り入れて悲観的になって・・・ そんな風に接してたら、すごく勿体無い様な奴等でさ。」 皆が皆、重たい物を抱えてる。 それでもみんな、歪ながらにしっかりと手を繋いで、 自分の両足で、しっかりと大地を踏みしめて立っている。 そんな、人たちだから・・・ 「だからさ、私―・・・」 「ん?」 「私・・・もう少し、頑張ろうと思う。」 「――――うん。」 の言葉に、は柔らかく笑んで、頷いた。 「オウ、嬢!!」 「あい?」 その時、唐突に思いがけずモーゼスに呼ばれて、が間の抜けた返事をする。 モーゼスが手招きするのを見て、と顔を見合わせる。 「なーにー?」 オブジェから体を離して、と共にモーゼス達の所に行けば、 チャバとモーゼスが、笑顔を向けた。 「チャバが、嬢に礼が言いたそうじゃ。」 「は?礼??」 「あの戦争の後、さんが目覚めなくて言えず仕舞いだったんで。」 「え、ちょ、ちょっと待って。 ・・・え?お礼?チャバさんに?な、なんで・・・・?」 思わず、戸惑ったような声を出す。 礼を言われるような事、した覚えがない。 何だろう。 何かあったっけか? 「前、カッシェルにオイラ達が襲われたとき、 逆上した兄貴をさんが止めて下さったと、話を聞きました。」 「あー・・そう言えばそんな事もあった気も・・・」 しなくも、ない。 実際そんなに覚えても無いんだけど・・・ そんな事でお礼言われちゃうと、ちょっと、困る。 「兄貴を止めてくださって、有難う御座いました。」 「えっちょ、あの、そんな、顔上げてください・・・・」 そう深々と頭を下げられても・・・ なんて返したらいいのやら。 だって確か彼、モーゼスたちよりも年上だ。 とすれば、自分から見ても大分年上なワケで、 そんな人に頭を下げられては、申し訳なくて仕方ない。 「おう、ワイからも改めて礼を言わせて貰うわ。」 「・・・・ええぇえぇええ!!? な、なんで!!だから私お礼言われるような事してないってば!」 「ええんじゃ、ワイが言いたいだけじゃからの。」 言ったモーゼスは改まったような顔をして。 「帰らずの森で、ワレがワイの事を止めちょらんかったら ワイは今頃おっ死んでたわ。・・・子分たちが生きとったのも知らんままなら その仇も討てんで無念のまま、死んじょった。」 「・・・・・お礼を言われるような事じゃないって言ってるのに・・・ って、私が何度言ったって、2人はお礼を言いたいのね?」 「ああ。」 「はい。」 「・・・わかった!受取っておく。ありがとう、モーゼス、チャバさん。」 言ったら、モーゼスとチャバは「なんでお前が礼を言うんだ」と 困ったように笑って。 も頬を掻いて少し笑って。 でもね、と続けると、モーゼスは不思議そうに首を傾いだ。 「モーゼスも、毛細水道で私の事助けてくれたでしょ? おあいこっていうか・・・貸し一個返しただけ!」 「イッコ?」 「あとは、やっぱり毛細水道で。 ギートの背中、貸してくれたでしょ?ワルターの為に。」 「あー・・・そんな事もあったの。」 ワレも細かいの。 言って笑うから、「まーね」と返しておく。 「そんなら、その借りは何処で返してもらおうかのう」 「さーって?まー、今までのブレスでの回復とか見てたら、 借りは充分に返してる気もするんだけどねー?」 「ぐっ・・・」 悪戯っぽく笑う。 モーゼスが言葉に詰まって、尚尚笑う。 「嬢には勝てんわ。」 言って、モーゼスは笑った。 「さん!!」 そうこうしていると、またお呼び出し。 ああもう忙しい。 思って振り返れば、今度はジェイだ。 慌ててが、そちらに走る。 その背中を見ながらモーゼスが溜め息と共に頭を掻く。 「兄貴。」 「あン?何じゃぃチャバ。」 「さんの事、結構気に入ってるでしょ。」 「・・・・・・・ほーじゃのぉ。」 否定はせんわ。 言ったモーゼスにチャバは笑った。 |