灯台の中は、どちらかと言えば雪花の遺跡や艦橋と似た 白を基調とした機械的なつくりをしていて、 真ん中に、昇降機が取り付けられている。 で、状況はやはり。 「はい、じゃ〜みなさん頑張って!」 「はい、じゃあさん、さっさと乗ってくださいね。」 「いやあああぁぁあ!ジェイ、引っ張んないで手ー引っ張んないで! 私を引きずり込まないでえぇ!!!」 「・・・この光景も、見慣れてきたな。」 「・・・・だな。」 ずりずりと引きずられて、昇降機に足が乗る。 同時に、光が出入りを制して、ガコン!と音がした。 ・・・・あ、ちょっと待って。逃げ場が無い、此れ。 ゴゴゴゴゴ・・・と、なんか不吉な音がする。 「何の音じゃ!!?」 「まさか、トラップ・・・?」 言った瞬間、ヒュンっと、体を浮遊感が襲った。 内臓だけが取り残される感覚。 猛スピードで、落ちている。 「きゃああああああああぁぁぁぁ!!!?」 ちょ、ちょ、ちょっ!!!! せめて前置きくらいしてよちょっとおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!! |
打ち捨てられた地で3 |
波の音がする。 寄せては返す、穏やかな波の音。 自分は、知っている。 この、穏やかな音。 「・・!・・・ん!さん!!さっさと起きて下さい・・・!!」 「・・・んっ・・・・」 耳元で声がして、意識が急速に集まる。 ぼんやりと目を開けば、目の前に―・・・・ジェイの顔。 「・・・・・ぅううわああああぁぁあ!!!?」 あまりのドアップに、猛特急で離れる。 え。ちょ、え、何この状況、あれ・・・!? 「・・・まったく、高い所から動くたびに 人にしがみ付くの、どうにかしてくださいよ。」 「・・・・・あー、なるほど。なんとなく理解できた。」 そうだ、昇降機。 あれが急に動き出したから、一番近くに居たジェイにしがみ付いたんだ。多分。 「・・・波の音・・・?」 セネルの呟き。 が首を傾げて、けれども皆、 呆けたように一点を見つめながら、歩き出す。 戸惑うようにがその後に着いていく。 サラリとした砂浜を歩いて、波打ち際まで来た。 セネルたちは以前無言のままで、一体どうしたんだろうと思う。 「海だ・・・」 「海って・・・・波がほとんどないのに・・・?」 「・・・こんな静かな海がありえるのか・・・・。」 「あ・・・そっか。」 がポンっと手を打って。 そう言えば、この世界の海で この穏やかな波の音は在り得ないのだと、ようやく理解した。 唐突な落下で、頭が働いていないと見た。 「ワイ、初めて見たわ・・・・」 呆然としたモーゼスの呟き。 がぼんやりと、その穏やかに広がる波を見つめる。 こうしていると、母の実家を思い出す。 昔――本当に3歳そこそこの頃。 海が近い祖母の家に住んでいた頃。 よく、一人で浜に座って、ただぼんやりと波を見て過ごしていた。 今にしてみれば、なんて子供げがないと思う。 せめて砂の城でも作ってれば、可愛げがあるものを。 「何て穏やかな、波の音なんだ・・・」 「聴いちょると、落ち着くのう」 言って、皆が波の音に耳を澄ます。 その時、いつも通りなやかましい声が、その静かな空間を遮った。 「みんな〜〜〜〜〜〜!!! ちょっとちょっとちょおっとお〜〜〜!!!」 「うるさい人が来ましたよ・・・。」 「そんな邪険にしなくたって・・・・」 いいんじゃないかな〜・・・・ははは・・・・ 「あんたら・・・呑気に海なんか眺めてる場合じゃないって・・・!」 「お前はこの海を見て、なんとも思わんのか。」 「感性が貧しいんじゃないですか?」 「・・・どしたの?ノーマ、そんなに慌てて。」 なんだか余りに酷い扱われようだから、思わずが聞けば、ガシっと肩を掴まれた。 あー・・・聞かなきゃ良かったかもしんない・・・・。 「良くぞ聞いてくれました・・・!!」 「は、はい・・・?」 なんでしょう・・・? 軽く引け腰で尋ねれば、ノーマは上を指した。 「い〜からさっさと上を見る!ささ!!」 「うえ?」 何なんだ一体・・といった風に、一同が上を見上げる。 「おお!!?」 まず声を上げたのは、モーゼスだった。 「そ、空が・・・。」 「空が、閉じている・・!?」 見上げた空。 其処には雲が流れて、星が瞬く。 いつもと何ら変わりない、空。 唯一つ。 異質なのが、その空を幾つも廻る、繋ぎ目。 セネルたちの言うとおり、空が閉じているのだ。 「そうか、わかりましたよ。僕達が居るのは・・・・」 「なるほどのう!」 しばらくぽかーんと空を眺めて、やがてハッとした様に言ったジェイの言葉を モーゼスが手を打って閃いたように遮った。 「こいつは夢じゃ! ワイ等は揃って同じ夢見とるんじゃ!」 「・・・・・あー・・・・ジェイさんジェイさん、先、続けてください。」 この人の発言、華麗にスルーしてちょうだい。 が言うと、呆れた様にジェイが溜め息をついて 「そうさせてもらいます」と、続けた。 「僕達が居るのは、遺跡船の地下深くです。恐らく、灯台の遥か真下でしょう。 僕達は、昇降装置の様な物で、上から下りてきてしまったんです。」 「あー・・・さっきのひゅーんですな・・・」 あの思い出しただけで眩暈がする・・・・ 「あたし等が寝てたトコに、たっか〜〜〜い塔が建ってたよ!」 「・・・その塔が、昇降装置と言うわけか。」 なるほどな・・・とウィルが顎に手を当てて考え込む。 「それにしても、驚きですね。」 「遺跡船の内部に、こんな広大な地下空間が広がっていたとは・・・。」 「て事はさ、この壁の外側では本物の海が荒れ狂ってるって事・・・?」 怖いね・・・苦笑して言うと、クロエが僅かに身を固める。 あー、ごめんクロエ。カナヅチなの忘れてたわ。 「む・・・?」 その時唐突に、セネルの爪が光る。 それは、上では決して使うことの出来なかった光だ。 「セネル・・・どうした?厳しい顔をして―・・・」 「魔神拳・・・!!!」 ウィルの問いに僅かに早く、セネルが言って拳を突き出した。 衝撃波が砂浜を伸びて、一直線にモーゼスにぶち当たる。 「ギャヒイィィ!!」 唐突の事に、モーゼスが悲鳴をあげて、砂浜に倒れた。 皆が、ハッとしたようにセネルに向く。 「クーリッジ!爪術が使えるようになったのか!!?」 「何すんじゃコルァ!!」 「・・・すまん、出るとは思わなかった・・・。」 「・・・いや、実は結構確信を得て狙ったでしょ。」 だってなんか嘘っぽい、嘘っぽいよセネルの顔が・・・!! 黒セネル!!?え、あれ、そんな設定でしたっけアナタ・・・・ 「あたしもやってみよ!え〜〜〜っい!」 ノーマが唐突にストローを構えて、モーゼスにブレスをかます。 グレイブが見事に決まって、再びモーゼスは砂浜とコンニチハ。 「あ、復活した。」 「・・・モーゼスが再起不能ですよお嬢さん。」 こっちも復活させてあげて下さいよちょっと。 「むむ・・・!!」 「じゃから!全員でワイを見んな!! 実験すんなら別々の方向かんかい!!!」 何気に皆さん殺る気まんまんな事に気付いて、モーゼスがあわてて言う。 ・・・今、となりで舌打ちをしたおチビさんが一人いましたが、 スルーの方向でいいでしょうか。 すっかり元通りじゃ!! そう言ってモーゼスが飛び出して行った。 時間が大分たつけれども、戻ってくる気配が無い。 「・・・・迎えに行った方がいいのかなぁ」 「放っておいたら良いんじゃないですか? どうせ気が済んだら帰ってきますよ。」 がぼやいた時、砂浜を戻ってくる紅い影。 パタリと倒れて、動かなくなる。 「ダメじゃ・・・上に戻った途端、爪術が使えんようになった・・・」 「まあ、そうだろうねえ・・・・普通に考えて。」 「とことん、バカだったみたいですよ。」 「あ、あはは・・・・とりあえずはえーっと・・・・レイズデッド・・かな?」 「勝手に殺すな!!!」 |