打ち捨てられた地で12 |
起動させた入り口に入る直前、唐突にワルターからの襲撃を受けたものの どうした事か、ワルターの爪術は全くもって弱くなっていて 最終的に、シャーリィのものだろうテルクェスに強制送還されていくと言う ちょっとした事件を挟んだりもして。 「何・・・だったんだろうね、ワルター。」 「恐らくは、さんと同じような状況なのでしょう。」 この静かの大地では、蒼我の恩恵は受けられない。 だからワルターも、爪術は余り使えない。 そういう状態なのだろうと言うジェイの言葉は、 実際、それに苦しんでいるには酷く納得の行くものだったりして。 それはそれでともかく、だ。 「うわっ、中寒っ!!」 「〜〜〜〜〜さっむーー・・・!!」 モニュメントの中に足を踏み入れた途端、 肌を締め付けるような寒気が一気に身体を包む。 ノーマが自らの体を抱き込むようにして縮め、 は、少しでも熱を・・と腕を擦る。 覚悟はしていたもののここの寒さは半端ではない。 冷凍庫とか、そんなレベルでは最早ない気がする。 「これはアレだきっと・・・涙とか鼻水とか・・・ 口ひげについた水蒸気ですら一瞬で凍るレベルだわ・・・」 「何ブツブツ言ってるんだ・・・?」 「こんな格好で中に入って良い場所じゃないって言ってるの!」 前の格好よりも防寒が多少あるから助かったけれど それでも、どちらかと言えば夏に耐性がある方の格好だ。 南極地点の寒さに立って良い様な服装じゃない。 「いきなり温度が下がったな・・・まるで氷室の様だ。」 「も〜・・モーゼスとか見てるだけで寒いっ視界入んないで! くそー寒いーうわーそれで無くても冬苦手なのにー」 「後半ワイ関係ないじゃろが!」 白い息を吐きながら、擦る腕も一向に効果を見せなくて どうしようもなくモーゼスに当たれば盛大に突っ込みを頂く。 とは言え、寒さはやはり、紛れない。 「確かに、は人一倍露出箇所が多いからな・・・。」 「前の服よりはマシだけど〜〜・・・生地が薄いからやっぱ寒い・・・」 周りからは、水滴か何かが凍っているのか、 ピキピキと高い音が、幾重にも響いて聞こえてくる。 それが余計に寒さに拍車をかけている気がする。 「そ〜ゆ〜時はアレね!人から暖取り!」 こん中で一番寒さに耐性がありそうなのは〜・・と ノーマが辺りを見渡して、視線はジェイに止まる。 「やっぱ、此処はジェージェーで暖取りか。」 「お断りします。何で僕が・・・」 「え〜!?な〜んでよーぉ! か弱い乙女が寒さに弱ってんのよ!?」 「か弱い乙女・・・?」 「セネセネ、なんか言った!?」 思い切り嫌な顔をしたジェイと、話の腰を折るセネルと。 最後に、ゴキン!!と良い音がして、が顔を顰める。 ウィルの鉄拳が炸裂して、ノーマが頭を抱えていた。 「馬鹿な話をしていないで行くぞ、お前たち! 寒いのなら、早々に用事を済ませて外に出れば良いんだ」 「ご、御もっともで御座います・・・」 だからそんな目を光らせて自分を見ないでくれませんかね、 鉄拳は、御免です・・・・。 ウィルからソロリソロリと距離を取りながら、とりあえず、 次の部屋へいく為の扉を開けて、逆らわないつもりをアピールしてみた、 氷が飛び出してくる罠も、タイミングを合わせてしまえば 足止めすら喰らう心配は無く、一先ずの中間点で一同は休憩に着く。 とは言え寒さのせいか、 一箇所に動かずに止まっているのも中々厳しいものがあって 適当にその辺りをグルグル動いていたら、 ジェイに鬱陶しいという顔をされてしまった。 そんな顔をされても、こちとら死活問題なんじゃ!とか 既に言う気力も残っていない。 この部屋に来る途中、見つけた光のキュービック。 今回見せられた映像は、 白くて四角い船が陸地に横付けされ、その船が出港するところ。 そして、妙に寂れた廃墟の様な陸地。 あとは―――・・・ 「籠の鳥でも 智恵ある鳥は 人目忍んで 逢いに来る 人目忍べば 世間の人は 怪しい女と 指ささん 怪しい女と 指さされても 誠心こめた 仲じゃもの――」 「また、あの歌・・・ですか。」 「うん。火のモニュメントの続き・・・かな。 やっぱり、恋の歌にしか聞こえないんだよね。」 「仕方ありません、この際何故恋の歌が聞こえるのかという事は 一先ず置いておく事にしましょう。 また何か聞こえたら、逐一報告をお願いします。」 「ん、了解です。」 それにしても・・と、はノーマを見る。 ノーマは自らの体を抱きしめながら、やはり 「寒!凍える〜!!」とか叫んでいて。 やがて、ギュっとセネルの背中にひっついた。 「何くっついてんだよ・・・」 「あー、いいなー私もやるー暖寄越せー!!」 「俺で取るな!他にも取れそうな奴はいるだろ!?」 「だってジェイからはさっきお断りされたしー 此処はノリだよ、ノリ!」 「だから、くっつくな!!」 「行かないで、あなた・・・!」 「お父さん行かないでー!」 「お前等なぁ・・・」 まるで昼ドラの様な芝居を始めるノーマに倣って も子供役のつもりで加わってみる。 セネルは呆れ顔で、俺で暖を取るなって・・とか言いつつも、 振り払ったりしないのが、良い所だ。 「こら、そこ!!」 「うわっ、どうした!?」 その時、鋭い声が割って入ってきて、 ノーマとが驚いたようにセネルから身を離す。 「何で怒ってるんだ?クロエ・・・」 セネルが怪訝そうな顔で問いかける。 声を飛ばした本人であるクロエは、苛付き気味の顔で ノーマとを見つめていたが、セネルに問われると ハッとした様に顔を赤くした。 どうも、無意識の内に怒号を飛ばしていたらしい。 「お、怒ってなんかいない・・・!!」 そう言って、身体ごと顔を背けてしまう。 ノーマとは、顔を見合わせた。 これはもう、女の勘だ。 勘だけれども、お互い、思ったことは一緒らしい。 「なるほどねぇ・・・」 「いやぁ、これはこれは、」 ニヤニヤと、ノーマとが笑い合う。 試しにノーマがウィルにくっ付いてはみたけれど そちらに関しては全く無反応なクロエ。 むしろ、ウィルですら無反応な辺りは切ないが・・・ それはそれでともかく、だ。 は、クロエの肩に腕を掛けて笑う。 「クーロエ、頑張って!」 「な、何を・・?」 戸惑うようなクロエに、ノーマがそっと耳打ちする。 曰く、 「セネセネ落とすなら、リッちゃんいない内に決めちゃいな。」だそうで クロエの顔が、一気に真っ赤になった 「なっ、なななな・・・・!!?」 いやぁ、この純情少女め、とか。 ちょっとハートマーク付きそうな勢いでクロエを見つめる。 怪訝そうにセネルが「どうした?」とか問いかけるが、 クロエは思い切りドモりながら「いっいや、べっ別に!!」と 盛大に首を振った。 うんうん、寧ろなんで気づかれてないのか不思議なほどの反応だわーと いやに微笑ましい気持ちでクロエを見ながら。 「・・・何なんですか?一体・・・」 「ま、女の秘密って奴ですよ」 ジェイが怪訝に問いかけたのを、は笑いながら答える。 「じろじろ見るな!」 「何なんだよ・・・」 「いくじなし・・・・」 「俺がかよ?」 セネルは意気地なしお兄ちゃんの称号を手に入れた!とか 心の中でナレーション付けてみたりして。 これから、からかいがい―――もとい、応援しがいのありそうな2人を ノーマとニヤニヤしながら観察していた。 |