打ち捨てられた地で17 |
緑を主体とした、モニュメントの中。 は、うっ、と低く呻いて、モーゼスの腕を取る。 「あん?なんじゃい、嬢。」 「いや、条件反射っていうか・・・・」 「あー、確かにこの地面、宙に浮いてるみたいだもんねぇ」 の言葉に納得したのか、ノーマ。 足元に組まれるパネルは、緑の茂る大地を映し出していて、 それがどうしても、自分達の足が地から離れているように錯覚させるのだ。 「うわ、目ぇ回りそ・・・」 「ちょっちょっと大丈夫!?」 「うん、気合で頑張る・・・」 軽く青い顔をしながら、はどうにか頷いた。 それにしても・・・と、ウィルが 話が終わったらしいのを見計らって口を開く。 「この施設は、温帯の気候を再現しているのか?」 キョロキョロと、辺りの様子を伺いながらの言葉に、 ノーマが大きく頷いて見せた。 「暑くもなく、寒くもなくでちょ〜どい〜ね!」 けれども、それに反応してくれる人間がいない。 セネルとジェイは、そっぽを向いたままだ。 「だ〜も〜!ノリ悪っ!!」と、ノーマが地団太を踏み、 とグリューネの腕に縋った。 嫌な予感・・・なんて・・・・ 「グー姉さん、、力を貸して! 気詰まりな空気を取っ払うには、あたし等が体を張るしかないわ!」 「えー・・・私もなの?」 「ったりまえ!頼りにしてんだかんね!」 協力よろしく!と、背中を軽く叩かれて まあ頼りにされてるならしょうがないか・・・と諦めてしまう自分は ちょっと押しに弱いのかもしれない。 いつもの通り、ひとつ、ふたつと、謎の光に触れていく。 そして、その光に触れる度、空気は確実に、 よりいっそう重たい物へと変化していった。 今回の映像は、海に聳える巨大な塔。 それが、水の民の秘密兵器なのではないか、 と言うのはジェイの見解であり、皆も、 それについての意見は一致している。 2つめの映像では、その秘密兵器の発動される瞬間を見せ付けられ そして、3つめ 最後の光に、セネルとクロエが、触れる―― 瞬間、頭の中に注ぎ込まれるのは、荒れ狂う海。 遺跡船を中心に、天高く聳えるような津波だった。 一瞬視界が暗くなり、ハっとする。 辺りは先ほどまでと同じ、眩暈がするような足元のパネルと 穏やか過ぎるほどの、暖かい空間だった。 「・・・・今のは、津波か?」 怪訝そうに、ウィルが問う。 「遺跡船の力で、あがあなでっかい波を 起こしたっちゅうんか?」 信じられない、と言った顔をしたモーゼスが どこか呆然としたように言った。 腕を組んだジェイは、「だとすると、 莫大なエネルギーが放出された事になりますね」と酷く冷静だ。 「秘密兵器・・・か。 もしかしたら、蒼我砲の遥か上を行く・・・かもね。」 が、難しそうな口調で呟いた言葉に セネルが、ギュっと拳を握った。 「ここまで来たんだ。 最後まで、見届けてやる。」 そう、呟いたセネルは一度だけ、を見た。 昨日、自分が言ったことを覚えてくれているのだろう。 小さく頷いて、心の中で、応援を送った。 「そういや、あの歌は?」 聞こえてんの?と、小首を傾げてノーマが問う。 は、一つ頷いて見せた。 「多分、これがこの曲の、最後・・・・」 言って唄う歌は、モニュメントを幾つも巡り ようやく一つの歌になった、ソレ 逢いたさ見たさに 怖さを忘れ 暗い夜道を ただ一人 逢いに来たのに なぜ出て逢わぬ 僕の呼ぶ声 忘れたか 貴郎の呼ぶ声 忘れはせぬが 出るに出られぬ 籠の鳥 籠の鳥でも 智恵ある鳥は 人目忍んで 逢いに来る 人目忍べば 世間の人は 怪しい女と 指ささん 怪しい女と 指さされても 誠心こめた 仲じゃもの 指をさされちゃ 困るよ私 だから私は 籠の鳥 世間の人よ 笑わば笑え 共に恋した 仲じゃもの 共に恋した 二人が仲も 今は逢うさえ ままならぬ 逢って話して 別れるときは いつか涙が おちてくる おちる涙は 真か嘘か 女ごころは わからない 嘘に涙は 出されぬものを ほんに悲しい 籠の鳥 唄い終わって、一つの歌となったそれは、 けれどもやはり恋の歌で とてもではないけれど、それが一体、どう津波に関係すると言うのか―― やはり此処でも、謎は全て一つには繋がらない。 気を落としかけたの肩を、そっとウィルが叩いて、 無言のうちに励ました。 小さく笑みを返して、「大丈夫ですよ」と答える。 「先を急ごう。 全部・・・・最後まで、見届けるために。」 は、言う。 それに皆は頷いて、同意を示した。 けれども ――・・・・・ |