ジェイのお姫様抱っこで皆の下にたどり着いたに、
冷やかしの一つでも入るかと思えば、皆は予想外に心配をしてくれただけで


どうやら想像以上に心配を掛けていたらしい。


ウィルのアイテム袋から渡されたのはレモングミで、
そんな高いグミはいらないと断ったにもかかわらず、ほぼ強制で使わされた。


まあ、お陰で足の怪我は大分良好だけれども・・・・


何となく不服ながらも、の回復を見計らったかのように
ノーマに引きずられて、グリューネと共に、扉の向こうに押しやられる。

一体何をやるのかと思えば・・・・


「いい?
 この空気、あたし等でなんとかすんのよ!」

「えー、マジでやんの?」

「マジでやんの!
 ってーワケで、私が話題振りするから、グー姉さんがボケで
 んではツッコミね!」

「って、ええ!!?漫才!!?
 それは聞いてない・・・って言うか私ツッコミなの!!?」


予想外のことに、思わず待ったを入れる。

けれども、ノーマは口を尖らせただけだった。


「しょ〜がないっしょ〜?
 グー姉さんにツッコミが出来ると思うか!?」

「うっ・・・そ、それは・・・・」

「あらぁ、お姉さん、頑張っちゃうわよぉ?」

「きゃーっ!!良いです良いです頑張らなくて良いです!!
 分かったよツッコミするよ!!」

「よっしゃ!そんじゃーいっちょ、腹据えて行くよー!」

「おー!」

「・・・・・おー!!」


ワンテンポ遅れて、グリューネの応答。


ああもう、大丈夫かな、これ・・・・・・












白いエリカの彩る夜に
打ち捨てられた地で20













ノーマによって、いつの間にやらヘラヘラ同盟と名付けられた自分達。

ノーマのネタ振りに、グリューネのボケは絶妙と言えば絶妙で


「教えてー蒼我ちーん!
 グー姉さんの今日の下着、何色ですか!!」

「なっ、何を聞いている!
 蒼我を馬鹿にしているのか・・・!!」

「って、ちょっ!クロエ、それ私の役所ー!!」

「あっす、すまない・・・・っじゃなくてだ!!
 も、止めないか、まったく!!」


謝っちゃうクロエもクロエだと思うけれども


だからと言って、だ。


「えーっとねぇ、今日は・・・・」

「って答えちゃうのグリューネさん!!?」


良いの!?そんな男衆の前であっさりと・・・!!


「あら?忘れちゃったみたいねぇ。」


・・・・・・・・・・・・。



え、



「「えええええええええええぇぇぇ!!!?」」


思わずと言うか図らずと言うか


ノーマと見事にハモる叫び声は、けれども見事に余裕が無い。


「ちっ違うよね!グリューネさん!!
 あの、色を忘れちゃったっていう、そっちですよね!!?」

「んー・・・・履いてくる方を――」

「キャーーーーッ!!!ノーマ!ノーーマーーー!!!」

「そっ、それじゃあ今日はこの辺で!
 ヘラヘラ同盟でしたあ〜〜〜〜!!!」


何ていう、ちょっとドッキリのハプニングも挟んだりしたものの


一同は4つめ―――・・・・


最後の光に、触れた










機械音が、響いている。








足元を流れる蒼い光は、円状に床に広がっていて
たゆたう水の流れを髣髴とさせる。


耳につく、いっそ禍々しいほどの機械音さえなければ、
それはそれで、綺麗な光景だっただろうに。


雪華の遺跡のときと同じ、白を基調とした無機質な空間



「此処は、どこなんだ!!?」

「シャーリィ、いるのか!?」



真っ先に声をあげたクロエに続いて、
セネルが、声を張り響かせる。

辺りを見渡す一同が、一点に視線を集中させた先には、
台座の上にまっすぐに立つ、朧な姿をしたシャーリィの姿。


その見つめる先には、羽を象った、光り輝く何かがあった。


「嬢ちゃんのそばで光っちょるんは、何なんじゃ?」


問いを口にしたのはモーゼスで、けれども続くジェイは
伺うような口調で、また別の事を指す。


「・・・・・もうひとり、誰かいます。」

「シャーリィと同じ服装!?」

「あれも・・・・メルネス、か?」



ウィルが呟く。

光り輝く羽の、双翼の中心に、その人はいた。

遠く離れているために、良くは確認できない。

それでも、恐らく言えるのは・・・・・


「やっぱり・・・とおんなじ顔してる・・・・・」


先で見てきたメルネスと同じ人物だろうその人は、
一人その装置に腰掛け、まるで自分達の存在が見えているかのように
スっと此方を見据えていた。


その女性が、ゆっくりと立ち上がる。


それを合図としたかのように、シャーリィも、
ゆっくりと此方を振り向いた。


瞬間、皆が驚きに息を呑む。


セネルの、彼女を呼ぶ声が空しく響いた。


「シャーリィ・・・・あんた・・・・・」


が、信じられないように呟くその後は、
ノーマが、引き継いでくれた。


「リッちゃん・・・・何でそんな冷たい顔してんの・・・!?」


けれども、その問いかけに、シャーリィは答えない。


ゆっくりとその台座が下ってきて、
やがて彼女は、幻かのように消えてしまった。


引き止めるセネルの声も空しく、
セネルの声に弾かれるように、装置の中心にいた
と同じ顔のメルネスの姿も、一瞬にして消え去る。



そして、暗転した視界。


次に視界に飛び込んできたのは、
グルグルと回る、不思議な色をした暗闇――


もう幾度と経験した、不思議な空間


そしてそこに現れたのは、もう幾度と戦った
けれども、それとはまた違う種類のゲートの姿。



「うげっまーた戦うの・・・・?」


嬢は下がっちょれ。
 足の怪我、まだ治っちょらんのじゃろ」


「そーいうワケにもいかないでしょ。
 アチラさんは、やる気満々みたいだし、ね・・・・!」


モーゼスの申し出は大変ありがたかったが、
なんとも、ゲートはこちらの都合など知らないように見える。


その鋭い牙で噛み付こうとしてくるのを、はどうにか避けて
腰に据えた鉄扇を抜き取った。



「一気に畳むよ!」

「おうっ!!」

「ああ、任せておけ!!」



の声に返って来た、力強いクロエとセネルの声。


心強い気持ちで、は僅かに微笑むと
目の前の巨大な体に鉄扇を向け、走り出した。