翌朝。


海岸に集まった一同の中心にジェイはいて、
片手には地図が握られていた。


「さて、それでは改めて、作戦会議といきましょうか」

「よし!」 「おっけ!」 「オウ!」


兆しの見えた希望に、一同が力強く返事をする。


「・・・ってー、あれ?は?」


フと、何かが足りない、とノーマが首を傾げ
ジェイに向かった質問に、彼はニッコリと微笑んだ。






白いエリカの彩る夜に
打ち捨てられた地で31












「くっそー、久々に人の事こき使いやがってー!」


目の前に広がる、赤や青、黄色と色とりどりな
配線コードの光景に、眉根を寄せながらは口を尖らせる。


その片手にはスパナが握られていて、
コードの先端にあるボルトを、一つ一つ緩みがないか確かめた。



「こっちは平気だよ、!」


乱暴にが声を上げると、少し離れた位置から、
色素の薄い髪が覗く。


「おっけー、それじゃ、向こうのキュッポ君たちの方、
 手伝ってきてもらえる?」


の指示に、またしても返事は乱暴で
は頬についた汚れを拭いながら、苦笑した。


「まーだ怒ってるの?」


「だってアイツ!
 人の睡眠時間奪った挙句に、こんな面倒な仕事を・・・!」



しかも悪巧みのような伝言まで残されて!


言ったに、は苦笑の色を深める。


場所は暗い、倉庫の中。


自分達がいるのは、白く滑らかなボディをした

この世界で言うところの『機関車』の中、だった。









よくよく考えてみれば、自分達は、
光に触れて見る映像をいつも以上に見てきたと言うのに
いつものような睡眠時間を設けていなくて

ある程度話が纏まって、気が緩んだ頃には
皆時を計ったかのように深い眠りに就いていた。


もその一人で、簡易的に作られたベースキャンプの
ござの上、穏やかな波の音を聞きながら、深い眠りにあった。



さん、起きて下さい。」

「んー・・・・?」



それを起こしたのは、同じく眠ったはずのジェイの声で、
まだ重たい瞼を擦り瞳を開けば、すぐ目の前にジェイがいて
声を上げそうになった。


制したのはジェイの白い手で、
シーッと人差し指を添えられて、あげそうになった声を
ようやくの思いで飲み込んだ。


「な、なに?何かあったの?」


押し殺した声で尋ねた

そんな事をしなくても、深い眠りにいる仲間達は
ちょっとやそっとじゃ起きそうにもないが。

ジェイも抑えた声量で、受け答えた。


「朝早くすみませんけど、ちょっと着いて来てもらえません?」

「朝早くって・・・」


辺りを見渡して、空の具合を確かめる。


人工的に作られたにも拘らず、
まるでそれが自然のものであるかのように変わる空模様は、
此処が船の中であると言う事を麻痺させる。

辺りはまだ日が出ておらず、微かに遠くの海際が
藍に染まる程度。

『早朝』と呼ぶよりも、『深夜』の方がまだ近い。


「こ、こんな時間に闇討ちでもする気・・・?」

「して欲しいなら、喜んでさせてもらいますけど。」

「嘘です冗談です武器構えないでお願いだから。」


ちょっとしたお茶目じゃないのよー、と
布団を脇にやりながら言うに、まったく、と
ジェイは息を吐く。


相も変わらず、冗談の通じない奴だと思う。


「で、こんな時間に何処に行くって?」

「昇降装置の前です。」

「・・・・・あい?」


思いがけない場所に、思わず出たマヌケな声。

ジェイがヤケに良い笑顔をしていたのが、
逆にめちゃくちゃ怖くって。


闇討ち、本気で注意した方が良いかと思った。












車両を2つほど抜けて、最後尾に来る。


両脇に用意された椅子の間から、
モフモフとした尻尾が揺れていて、何だか少し和んだりして。


さん!どうしたキュ?」


「あ、こっち終わったから。
 キュッポ君達の方手伝ってーって、が。」


「助かるキュ!でも、キュッポ達の方も
 そろそろ終わるキュ!さんには休んでいて欲しいキュ!」


「え、本当?」



仕事早いなぁー、とが言えば、
真っ先に気付いてくれたキュッポは、自信満々に
その胸を叩いた。

小さいながらに頼りがいのある仲間だと思う。


それじゃあお言葉に甘えて、と椅子に腰掛けた
ひょっこりと顔を出したピッポ。


おや、と首を傾げると


「そろそろジェイ達も来る頃だと思うキュ!
 さん、もう少しの辛抱だキュ!」


「・・・・へ?」



辛抱って、何が?


豆鉄砲を食らったような発言で
間の抜けた表情のに、ピッポは笑った。



「ここに連れて来られてから、
 さん、ずっと寂しそうだったキュ!」

「そ、そんな事は・・・・」



ない、と、言いかけて。


けれども確かに。


自分だって皆と一緒に驚きたかったし
折角みんな、仲直りが出来たのだ。


どうせなら、今は皆と笑い合っていたいと思ったのも――事実だ。


むぅ、と頬を膨らませたにモフモフ達の笑い声が聞こえて。


やがて諦めたかのように


「まったく、モフモフの皆には敵わないなぁ」


言っては、苦笑した。



〜っ!みなさん来たよ〜!!」


「ヘイヘイ。んじゃま、ジェイの悪巧みにでも付き合ってあげましょか。」



機関車お披露目ドッキリに。


腰掛けていた椅子から立ち上がり言ったに、
3匹と1人の返事が重なった。