「だあぁっ!もう、みんな遅い!!」


「って、な〜んでが此処にいんの!?」


モフモフの効果音入りで登場させた、白いボディの機関車で
皆をドッキリ★大作戦は成功を迎えたわけで

機関車の中にゾロゾロを入ってきた一同を、
いち早く機関車内で迎えたにノーマが盛大に驚いて。

腰に手を当てて、ジェイに扱き使われてた、と言うと
「あぁ、それで・・・・」と、何だかとても哀れんだような瞳で見られた。


ごめん、その目止めて、結構心折れる、と項垂れた
一同の苦い笑いが更に心を折れさせる。


「無駄話してないで、さっさと中に入ってくださいよ。」


そんな一同の一番後ろから声を掛けるのはジェイで
ムっと顔を上げる。


「ちょっと、何か言う事ないわけ?」

「モフモフの皆やさんの足を引っ張らなかったですか?」


ニッコリと。

そりゃぁもうムカつくったらない声と笑顔で言ってくれたジェイに
流石にプッツンと行きそうに拳を握る。


、落ち着け!とクロエの静止が入り、
けれどもどうしてくれようコイツ、となった所で、「冗談ですよ、」と。


「お疲れ様でした。助かりましたよ。」


そう、言いたい事だけ言って、さっさと人の横をすり抜け中へと入っていったジェイ。

思いがけない労いに、はその背中を呆然と見送ってしまって。


奥の車両へと向かい、通用口の扉が音を立てて閉まったところで、
隣に立ったままのノーマに、言った。


「ねえ、私、本当に上手くジェイに使われてる気がする・・・・・。」

「あー・・・自覚、あった?」


ですよねー・・・と。

ノーマの同意に、再び肩を落とした。






白いエリカの彩る夜に
打ち捨てられた地で32











、モフモフの皆で協力して整備した機関車は、
どうにか正常に、線路の上を走っていた。



一先ず、この地下空間のどこかから、地上へ出る事が出来るはずだ、と言う
ジェイの見解を頼りに、かなり無差別に静かの大地を走りまくっているが、
まあ機関車に乗っているだけであるから、それも楽なものである。


物音のたびに反響する音にも慣れてきた頃、機関車は緩やかに速度を落とし


そして、停まった。


外に出てみれば、そこに聳え立つのは、遺跡船独特の
曲線の描かれる赤い壁。

そして、その壁の中央には、水にも見える薄い膜が揺らめく。


「う、っぎゃっ!!!」


皆に続いて機関車を降りようとしたは、飛びのくようにその足を止める。


理由は例の如く、だ。


「ねえ、何でこの世界、私に対する嫌がらせのような作りが多いのかな。」

「被害妄想も大概にしてくださいね。」


申し訳程度に組まれる足場は、金網で出来ていて、
人工的とは言え流れる雲が足元に見える。


・・・・なんでこの世界の人は、こんな不安定な足場が好きなんだろう。


引き攣らせる頬に、ジェイは言うが、聞く耳持たない。


「まったく、」


ジェイは溜息を吐いた。


かと思えば、グイっと腕を引っ張られ、不安定な足場に
ほぼ無理矢理下ろされる。


ギャッ、と乙女もへったくれもない声を上げて抱き付いたジェイの腕に
ノーマがニヤニヤと見ているが、こちらもやはり気にしない。


ジェイはもう、諦めたのか何なのか、溜息を吐いて
「行きますよ、」と促すだけだった。


「いやぁ、ジェージェーが率先してに抱きつかれに行くとはぁ」

「妙な詮索してないで下さいよ。
 こんな所で無駄足を食っている場合じゃないんですから。」

「っていう理由に託けて、おいしい役所を〜・・・・」

「・・・・ノーマさん、頭の風通しが良いのはお好きですか?」

「あ、あはは・・・ちょっと、好みじゃないかな・・・・・」

「ぎゃーっジェイ、暴れないで!死ぬ!精神的に死ぬ!!!」



こんな所で振り回されたら死んでしまいます!!!


ノーマに向けて素早く引き抜いた短刀を構えたジェイに
の涙目の訴えに、ジェイは呆れたようにソレを収めた。


そして、やれやれ、と改めて


赤い壁を見上げる。


「恐らく、ここが上へ通じる出口ですね」

「ヨォォシ!見つかったのう」


モーゼスが、大きくガッツポーズを決めた。

ジェイが壁をグルリと見回し、元創王国時代の封印だろうと言うと、
ノーマは頬に指を当て「ってことは、爪術の力で開けられるのかな?」と小首を傾げる。


モーゼスが、胸を張って笑った。


「今のワイ等にゃ、楽勝じゃろ!」

「そうだな。」


頷くクロエ。

何だか、こういう時に限って、会話に入り込めないのが悔しい限り。


それもこれも、全てこの、足元が不安定な設計が悪いのだと信じてやまない。


んじゃ早速!とノーマ。


その声を合図に、一同は一斉に、その壁に手を翳し、
どうにかそれには後れを取る事無く、も壁に手を当てる事が出来た。


中央に張られた水の膜が光を放つ。


その眩しさに目を細める暇もなく、一瞬で収束した光は
それと同時に、揺らめいていた水の膜を消失させた。


瞬間、辺りに響く重苦しい音。


ゆっくり、ゆっくりと

赤い壁が、左右へと開かれていった。


「おおおぉぉ・・・・・」


しばし、此処が高所である事も忘れて、はそれを見つめる。



「ここまで来たら、あとは一直線ですよ。」



最後にガコン、と音を立てて止まったソレを確認して、ジェイは皆に向き合った。


ウィルが苦笑しながら、「本来なら、ここで人類のためとか、
世界を救うためとか言うべきなのだろうが」と言うのだが、ノーマはカラカラと明るく笑い飛ばす。


「あたしらのガラじゃないよね〜!」

「大袈裟すぎ!って感じかな、もっと控えめで良いよ」

「控えめも控えめで、さんのガラじゃありませんけどね、」

「なんだとうっ!?」


苦笑いしたに、ジェイがからかい、が噛み付く。


いつもの一連の流れに、ウィルが咳払いで静止をかけて、
はいけね、と小さく舌を出した。



ウィルがやれやれ、と困ったように一同を見回す。


そして、一度瞳を伏せると、真っ直ぐに視線を向けて、言った。


「この際、動機は何でも構わん。
 大事なのは、俺達の目的が同じだと言うことだ。」


皆の視線が、交差する。

小さな、けれども力強い、頷き。


「大沈下を食い止めるために!」


「全ての決着をつけるために。」


セネルの声が、啖呵を切った。


「蜃気楼の宮殿へ、乗り込むぞ!」


おおっ!!


一同同時に、高く振り上げた拳は
今までに無いほど、皆の気持ちが揃っている事を、訴えているようだった。