禁断症状発令中












アイス断ち1日目:



「マスターいってらっしゃい!」

「あいよー、いってきますー」

「今日は俺、別の甘い物を食べて我慢しますね!」

「うんー、家にあるものだったら食べて良いけど
 あんまり食べ過ぎないように気をつけてね」

「はいっ!」




言って、カイトはを見送る。

良い笑顔で手を振った。





「・・・・で、帰って来たらどうしてこうなってるわけ。」

「だって、冷たくないんですもん・・・・・」

「だからって家中のお菓子を
 冷凍庫に詰め込むお馬鹿がどこにいますか!」


もうコレ冷凍食品が何処にあるかも分からないよ!

いやむしろ家中にこんなにお菓子があったんだーとか驚きだけど!

って言うか甘い物だけじゃないし!

ポテトチップスとかお煎餅とかも入ってるし・・・!!!


アイスの代わりに冷たいものを求めるなら、
せめて甘い物だけにして頂戴!!


「はいっ!今すぐ片付ける!!」

「ええっ!?結構コレ詰め込むの大変だったんですよ!?」

「知るかーーー!」


それは家のありとあらゆるお菓子を詰め込みまくるからでしょう!!


言ったら、カイトはブスーっとしながらも冷凍庫の中のお菓子に手をかけて。


一つ引っ張り出したら、ギャグかと言うくらいに
ギチギチに詰め込まれていたお菓子が一気に雪崩を起こした。


「・・・・頑張ったのに・・・・」

「何か頑張りどころが違うくないですかお兄さん!!?」






アイス断ち2日目:



歌の番組が、テレビで流れている。

最近ヒットしている曲らしいけれど、どうにも耳に入ってこない。


隣で同じようにしてテレビを見ているカイトが気になって、
とりあえずそれ所じゃ、ない。


「あのー・・・カイト。」

「はい?」

「それ、美味しい?」


言われてキョトンとするカイト。

その手には、袋一杯に詰められた氷。

カイトはそれを、定期的に口に放り込む。


・・・・・お腹、壊すなよー?


「えーっと・・・でも冷たいんで。」


一番ソレっぽいかなーと思ったんですけど。


カイトは言う。


まあお水だからお金も掛からなくて良いけどさ。


って言うか昨日から思ってたんだけど


重要なんだ、冷たいのって。


っていうか肯定しなかったって事は


やっぱり、美味しくはないんだ。










アイス断ち3日目:



「あれ?もう氷は止めたの?カイト。」


「だって、甘くないんですもん・・・・」



3日目にして振り出しに戻りましたっと。


冷たいのも重要だけれど、やっぱり甘いのも必須らしい。


だったらなんで初日にお煎餅とかまで氷漬けにしたんだ・・・・とか。


っていうか、だったら砂糖水とか凍らせたら・・・・って


昨日の勢いで砂糖水の氷食べてたら、きっと数日後には
肉付きが良い事になってそうだ。


今話題のボーカロイドを肥満体系にって・・・

2525のお姉さん方大半を敵に回すようなものだわ。


いけない。


それは、いけない。


カイトはソファの上でゴロゴロしている。


無気力サイクル突入ですか、兄さん。










アイス断ち4日目:



は一人、部屋にいた。


カイトはと歌のレッスン中だ。


最近では、夜のレッスンの歌を隣の自室で聞くのが日課になっている。


たまにカイトは音を外して、思わず苦笑してみたり。


それにしても、今日は音を外す云々の前に―――・・・



『ドーはドールチェーのドー レーはレモン味ー
 ミーは冷凍ミーカーンー ファーはアーモンドファーッジ
 ソーはソーダバー ラーはラムレーズーン シャーベットも良いなー
 ああ食べたいな〜♪』


『って、やる気があるのかお前はーーー!!』


『ええっ!?何でさん御立腹なんですか!!?』


何だ当てつけですかコラ。


しかも無意識にやってるってどういう事だ。









アイス断ち5日目:



「マスターいってらっしゃい!」


「あいよー、いってきます」


「今日も元気にバニラアイスがラムレーズンですね!」


「・・・・・・・・・・はい?」


「あ、マスター。
 今日は午後からチョコミントがハーゲンダッツでしたから
 サーティワンを持っていかないとポッピングシャワーになりますよ!」


「・・・・・・・・・・・・。」


「マスター?」


「あ、うん、いや、何でもない、うん。」



そうか、とりあえず傘を持っていけば良いのか。

お天気お姉さんが午後から降水確率60%って言ってたもんね。

今日は午後から〜を持っていかないとーの辺りから推測して
多分そんな感じだろう、うん。


・・・・・解読できた私、偉い。


「マスター、どうしたんです?何か顔色がストロベリーで抹茶味ですよ?」


そっか、そりゃ大惨事だわ。


・・・ところで、顔がストロベリーで抹茶味ってどういう状況ですかカイトさん。


「ごめん、うん、何でも無いから本当に。じゃああの、行ってくるね」


「?いってらっしゃい、マスター!」


カイトの相変わらずな凄く良い笑みで見送られて
玄関の扉を閉めた。


そのまま早足で、車に乗り込む。


運転席について、息を吐いた。



「こりゃ末期だわ。」



禁断症状発令中。


5日持っただけでも、まあ良し・・・・なのかなぁ・・・


車にエンジンをかけながら、思わずもう一度溜め息をついた。