「えー?何、ン家に居候なんかいたのー?」 「う、うんまあ。」 「ああ、でも納得だよねー。最近ののお弁当3種類あったもん」 「明らかにさん作だと分かる素っ気無い、しかし味はバッチリなお弁当とー」 「まあっぽいよねーな、そこそこ手の込んだお弁当と・・・・」 「あとはどうしたコレ!!?って言うくらい大変な事になってるお弁当ね」 うんうん、と悠姫とヒロが頷く。 そうか、君たちはそこまで見ていたのか。 チラリとカイトを見る。 どうもこの学生だけの空間が珍しいらしく、ソワソワと落ち着かない様子だ。 彼が、わざわざ聖書を届けてくれた事は、分かった。 お陰でいんぐりもんぐりはなしになるわけだし、助かった ・・・・・けれども。 お陰で友人たちにカイトの存在を知られることになってしまった。 「でも、これなら最近、の付き合いが悪いのも分かるよねー」 「あー、確かに。 私でも早く家に帰りたくなるわー」 いやー、もうこんなカッコイイ居候が〜!!と とりあえずヒロと悠姫は納得してくれてはいる。 いる、けれども・・・・・ 「あ、あの・・・・。」 「・・・・・なに。」 「し、視線が・・・イタイ、です・・・」 納得の出来てないお嬢さんが一名。 キョロキョロと落ち着かない様子のカイトととを見比べて ムッスーとした表情をしている。 まあ、悠姫とヒロは誤魔化せても、彼女だけは誤魔化せないだろう事は 覚悟の上だったのだ、この際、仕方ないだろう。 「あー・・・・、ちょっと良い? あ、カイトちょっと連れて行くねー?」 「えー?さっさと連れて戻ってきてよー?」 カイト君と話したーいとヒロ。 ああもう、すっかりカイトも友人内で有名な人になってる。 思いながらも、ハイハイ、と返事して、に目配せをする。 は無言で小さく頷いて席を立ち、カイトもソレにつられる様にして立ち上がる。 ああもう、怖い顔してるなあ・・・とは頭を掻いて、 とりあえず中庭に行こう、ととカイトに呼びかけた。 ただの居候、ですよ 「で、どういう事なのか説明してもらおうか?」 折角の天気の良い本日。 お昼の中庭なんて、これ以上ない位に気持ちの良い所のハズなのに は腕を組んで仁王立ちだ。 は困ったように隣のカイトと視線を合わせるが、 カイトもカイトで戸惑った様子で自分を見返していて。 その時、唐突にがの肩を掴んで、凄んだ。 「何で・・・!こんな萌えがの家に居る事を!もっと早く話してくれなかったの・・・・!!!」 ・・・・・・・・・・・・・・・。 「え?」 今、何て言った?この子。 いや、ちょっと待って 彼女がその、ガッツリオタク属性にいる事は知っていたけれども。 ・・・・・・え? 「お、怒り処って、そこ?」 「そこでしょうがフツー!!!」 えー、なんか自信満々に言われたんだけど、そうなのかなー・・・ 「いや、まああの、だってさ、さん?」 「何?」 「・・・ヤッベどうしよ!!カイトが実体化して自分の事マスターとか呼んだ!!」 「ヤッベニコニコの見すぎだ病院に行って来い!!」 「・・・・・・ほら見ろ。」 「・・・・・・ぉお!!」 どれ試しに、と迫真の演技で迫ってみれば、は予想通りの反応で。 彼女はポンっと手を打って、酷く納得した様子だった。 うん、百聞は一見にしかずってよく言う。 けど、何でこんなに切ないんだろう・・・・ 「あー、うん。そんなワケで機会を逃してて言えなかったんだけどさ。」 ゴホンっと、ワザとらしく咳払いをして、気を取り直す。 そして、に少し前、カイトが来た件を説明すると、彼女は物凄い興奮のし様だった。 曰く 「ヤバイヤバイ!本人!?リアルカイト!!?うっはー」 「あー・・・うん、とりあえず落ち着こうね、――・・・」 「ねーねー、私ミクコス最近したくてさー兄さん借りて良い?」 「は?」 「いやー、やっぱ本人を相方にとか普通出来ることじゃないしさー 本人だけあってすげーあの格好映えるだろうし。 あっでも私服カイト萌え!!服のセンスの?いやーグッジョブ!!」 「いやあの、?」 「あっ、ついでだしもこっちの世界来ちゃいなよYOU! 多分なら少し厚底履けばメイコ出来るよメーちゃんナイスバディ!」 「おーい、さーん」 「よし、これで夏の聖地はボカロで決定ですね!?そうですね!!?いやっほーい」 「聞けえぇい!!そして私はコスはしない!ついでにカイトも貸しません!!!」 思わず懇親の力を込めて言ったら、が物凄い衝撃で固まる。 ああカイトがこの勢いに負けて呆然としてるじゃないのよ。 「あの、マスター。」 「あー・・・はいはい?」 「え・・・・っと・・・個性的な人・・・ですね」 「違うわカイト、こう言うのを変人って言うの。」 そんな元も子もない事をハッキリと・・・・ カイトがより一層困ったような顔で自分を見つめ返していた。 「なんでえ〜!?どうしてえ!! こんなナイスチャンスを私に逃せというの!!?の鬼!悪魔!!鬼畜眼鏡!!」 「おだまり!!誰が某BLゲームだ!!!」 って言うか昼間の中庭でこんな事を叫ばせないで頂戴!! ああもう、って言うか話のネタが分かる自分が物凄く嫌なんですが。 は腕を組んで息をつく。 とりあえず落ち着け自分。 「っとにかく、そんなワケで、ウチにリアルにボーカロイドが来ちゃったわけよ。」 「っはあ〜、すごいねえ、まあ夢見たいな話があるもんだわ。」 言ったは、シミジミとカイトの事を見やる。 既にあの信じられないような話に適応している彼女が凄い。 それから、ああそう言えば、と思い出して、はカイトに向き直った。 「コイツは友達の。まあ、見ての通りどっぷりオタク人間。」 「もこっちの世界に浸かっておいで〜楽しいから。」 「いや、遠慮する。」 とりあえずそこは即答しておいて。 逡巡して、言う。 「それで、あー・・・・ KAITOを買ったのは、私じゃなくてコイツなのよ。」 「え?」 「あー、そうそう。 私のパソコンが壊れちゃっててさ、に預かってもらったの。」 まさかそれが実体化するたーねえ・・・と、は呟いて。 「まあ何てーのかな、マスターになる筈だった人間って言うの? あーあ、私もカイトを唄わせてあげたかったなー。」 言ったはショボくれている。 は音楽もちゃんと出来る人だし、だからこそ、余計に悔しいんだろう。 残念そうにしている姿は、先程までと打って変って真剣そのものだ。 そんなの姿を見ながら、掛ける言葉に迷っていると、 カイトが躊躇いがちに肩を叩いてきた。 「あの、マスター・・・・」 「何?」 「あの・・・・・」 カイトが、戸惑うように声を出す。 その声音に首を傾げて見上げれば、長身が、不安そうに自分を見下ろしていた。 「マスターは・・・マスターじゃない・・・・ん、ですか・・・・?」 「・・・・・・・え?」 カイトのその言葉に、は目を見開き、言葉を失った。 その言葉が、思いがけず、胸に重く来た。 思わず視線を下に逸らしたに、がハっとする。 「ち、違う違う!マスターはで良いんだよカイト!! 私は運悪く手放しちゃったんだし、マスターはで良いの!!」 そこは取り違えちゃいけないよ!!?と慌ててフォローを入れる。 けれども、は思わず視線を落としたまま、上げる事が出来なかった。 マスターじゃないんですか・・・? ずっと自分の心に閊えていた物を、本人に指摘されるのは、正直、きつくて。 「そう、ですか・・・・・良かった」 カイトはホッとした様に息をついたけれども 自分には返す言葉が、見つからなかった。 |