いつもの日常 「ただいまーあ・・・・」 ぐったりとした声を出す。 期末テストは今日でどうにか終了のはずで 一週間、なんかもうボロボロだ。 ああでも、これでやっと解放される・・・・ ホッと、安堵に似た息をついて、リビングに入る。 「おかえりなさいっマスター!!」 おおう、いつもに増して、カイトの笑顔が眩しーぜい ただいま、と、疲れた笑顔でもう一度返して。 カイトはパタパタとスリッパの音を響かせながら近くに寄ってきた。 「一週間、お疲れ様でした、マスター」 「・・・・うん、カイトも、ご協力ありがとうございました。」 カイトの素直な笑みには、どうにも負ける。 ここ一週間ロクに笑っていなかったからか ホっと緩んだような気分になった。 「今日は、マスターの好きなものいっぱい作ったんですよ」 「わー、それは嬉しい。カイト本当に料理上手いからなあ」 自分も負けてられないなあ、なんてボヤキながら。 実の所、カイトが自分の好きな物を知っていてくれたことが嬉しくて。 だって多分、彼に自分の好きなものなんて、教えた覚え、ない。 「さんの部屋に居る間、結構時間があったんで。 いろいろな話を聞かせてもらったんです」 「いろいろなって辺りが引っ掛るなー」 何聞いたのよ、あの兄貴から テーブルに座って、頬杖を付く。 エプロン姿のカイトは、微笑みながら、出来上がった料理を次々に並べ始める。 彩り豊か、更に美味しくて、自分の好きなものばかり。 お腹、空いたな、流石に。 「色々ですよ、取り止めもない事です。 マスターの好きな食べ物とか、好きな歌とか。」 カイトの言葉に、何となくムゥっと口を尖らせて。 どうしました?と首を傾げるカイトに、は言う。 「そんなの、本人に聞いてくれれば良いのにさ、」 しばらくカイトはきょとん顔で、後に、笑いを堪えるようにしながら 「それじゃあ、ご飯食べながら、聞かせて下さい」なんて。 「あ、今日はさん、帰って来ないそうですよ」 「あー、そっか週末だもんね。 あの遊び人が帰って来る訳ないか」 そりゃそうだよねえ、と お箸とお皿くらい出すか、と立ち上がりながら言って。 「マスター、ビール飲みます?」 「あ、一本だけ飲むー。 たまにはカイトも付き合わない?」 カイトは、別に酒に弱いわけではないそうな。 と言うより、流石あの姉にしてこの男ありと言うべきか、 割とザル属性であると、ここ数ヶ月を通して分かった。 けれど、たまに晩酌に付き合うくらいで、毎回という訳でもなく 詰まる所、余り好きではないから飲まない、という事らしい。 「え、え・・っと・・・い、一本だけなら」 カイトは苦笑いしながらも、久々にそう頷いた。 やっぱり、お酒は呑む人が一緒に居たほうが楽しくて。 そうとなれば、カイトが付き合ってくれるのは割と素直に嬉しかったりする。 よし、と頷きながら、皿と箸とを並べて ビールを二本出してきたカイトから、その一本を受取った。 テーブルに並んだ色とりどりの料理に、空腹はいよいよピークで。 席に座るとビールを開けて、グラスに注ぐ。 一応、乾杯、なんてグラスを合わせてみたりして。 ほんの少し口を付けた所で、カイトが問いかけて来た。 「明日は何か予定はあるんですか?」 「ううん、特にないけど・・・・」 言ってから、あ、そうだ、と手を打った。 「久々にどこか買い物行こうか。」 ちょっと遠出でもしてさ、と。 提案したに、カイトは微笑み頷いて。 「マスターといられるなら、何処へでも」 「へ?」 「結構寂しかったんですよ?2週間」 カイトのその言葉に、私も、なんて返せるほどの度胸はなくて 慌ててビールを煽って誤魔化した。 「じゃ、じゃあ、明日の予定はそんな感じで!」 その後に慌てて紡いだ言葉に、カイトは笑っていて してやられた感が、なんだか悔しい。 ああでも、明日が楽しみだな。 久々に、日常が戻ってきたような気がして 安堵が、そっと胸に広がっていった。 |