勝負開始









パラソル越しの陽射しが、降り注ぐ。

強い日差しに透けるカラフルな布を、何となく見上げた。


目の前には海が広がり、たちは
浮き輪に掴まっていたり、水を掛け合ったりと楽しそうだ。


笑い声は、砂浜で待機しているの元にまで聞こえてくる。


カイトを連れて戻り、さあ皆で遊ぼうとなった時に
それじゃあ荷物番をしているから行っておいで!とは皆を送り出して。

大ブーイングを喰らったけれども、皆には
割と強引に海へ特攻してもらった。

カイトは最後までコチラを気にしていたけれども、
最終的には、に腕をとられて行ってしまった。


そんなこんなで、は1人パラソルの下
シート越しの暑い砂を感じながら、1人のんびり読書タイムだ。


と、ポタリとひとつ、頬に水滴が落ちてきて
見上げれば、覗き込む形のカイトが居た。


「あれ、どうしたの?カイト」

「少し身体が冷えたんで、休憩です。」


荷物番代わりますから、マスター遊んできて良いですよ、と
隣に座り込んで身体を拭くカイトは言って、けれどもは曖昧に笑った。


その表情に、カイトは怪訝そうな顔をして


「やっぱり、なんかあるでしょ、マスター」

「いやぁ・・・あるっちゃあるんだけど、
 なんか今更で言い出しにくいって言うかさぁ」


視線をツツツ・・・・と逸らしながら言う
カイトは首を傾げて。


それから、あっ!と手を打った。


「まさかマスター、カナ・・・・」


後半部分は、の大声に掻き消された。

驚いて目を丸くしているカイトに、は肩で息をしていて。


「あ、当りですか?」

「べ、別に泳げないわけじゃないもん・・・・」


は、少し拗ねたように唇を尖らせた。


「ッて言うか、プールならまだ何とかなるのよ、うん。
 だけど海って波あるじゃん、あれがどうにも・・・・」

「苦手?」

「いや、波に酔う。」


言われて、そう言えば彼女、
毎朝電車通学で青い顔してる人だったな、とか思い出す。

本当に、乗り物全般が駄目みたいだ。


「そんなわけで、泳ぎはパス。
 私、砂浜でのんびりしてるの」


言い切ったに、カイトは「はぁ・・」と
何とも曖昧な返事を返して。


「それじゃあ、マスター」

「ん?」

「ビーチバレー、やりましょ?」

「・・・・・・・・・・はい?」







「はいはーーーい、それじゃあ皆さん、最初はグー!じゃんけん―――」



の元気な声により、皆が手を出す。


こういう時、は仕切るのが上手い。


カイトの提案に、そろそろ水に浸かるのも飽きて着ていたらしい3人は
見事に食いついてきて。


現在、こうしてチーム分けの段階に入っている。


出された手は、グーグー、チョキチョキ、パー1人。


チームは、カイト・チームと、・悠姫チームに分かれたらしく
ヒロはその審判、という事になるらしかった。


「よっしゃ、カイト!あたしらのチームワークを見せ付けるのだ!!」

「あ、ま、マスター、俺、頑張りますね!」

「いや、頑張らなくて良いよ、手加減してくれ」

とペアかぁ、負けたら何か怖そうだよね。」

「あー、分かったからホラ、ペアに分かれた分かれた」


それぞれがそれぞれ、言いたい放題やってるのを見かねて
ヒロが呆れた様に手を振る。

因みに、海の家で貸し出しをしていたビーチバレー用のコートを借りたから
形式的には割りと本格的だ。

ヒロは、サラサラの砂に突き刺さるポールの右に立ち
ネットの中央に、脇から正面に向き合う形になる。

ヒロから見て、向かって右のコートにと悠姫、
左のコートにとカイトが、それぞれ分かれた。


「そんじゃー、分かってんだろうな!」

「あー、はいはい、負けたら罰ゲームね。」


って言っても、何やるの?と首を傾げた悠姫に、
はドン!と胸を張って見せた。


「負けた方のチームが、勝った方のチームのいう事なんでも聞く!」

「そりゃまたオーソドックスだねぇ」


ははっと、ヒロが脇で笑って見せた。

その言葉に、はピっと指を突き立てる。


「しかし、オーソドックスだからこそ結構利くと思うんだよ私は!」

「あー、うん、まあ確かにねぇ」


コイツの言う事なんでも聞くなんて、確かにそりゃぁ怖いったらない。

思わず顔を引き攣らせた

は再び、炎天下の元胸を張って見せた。


「因みに私が勝ったら
 カイトとをコスの世界に引き込む事を所望する!」

「はい、却下〜」

「何で!勝ったら何でもいう事聞くルールでしょ!」

「だって、味方チームにまで罰ゲーム出してんじゃん、それじゃあ」

「あ、そっか。」


ポンっと手を打って、

カイトは、ものすごく困った笑みを向けていた。

まあ、気持ちは分かるけど。


「うー・・・それじゃあしょうがない。
 がメイドさんの服を着るので我慢してあげるよ。」

「ちょ、なんで罰ゲームそっち関連ばっかりなの」

「大丈夫大丈夫、ちゃんと今日持ってきてあるから。」

「何で!!?」

「初めからそっちの方向に話を持っていこうかと思って・・・・」

「あー、分かったからアンタら、
 それは勝負がついてからにしなさい」


試合始めらんないでしょー、と、ヒロの呆れたような声。

そうでした、とが申し訳無さそうに頭を垂れた。

そんなを見ながら、おずおずと手を挙げるのはカイトで
ちょっと良いですか?と、周りの人には控えめだ。


「点数は、何点取ったら勝ちなんですか?」

「えー、ビーチバレーだし、21点3セットマッチがメジャー?」

「そこまで本格的にやらんでも良いでしょ」

「じゃあ21点1セットマッチでどう?」


尋ねた悠姫に、りょうかーい、と女3人とカイトの声が揃う。


ホイ、んじゃあ始めるよーと


ヒロがのほうにボールを投げた。


チーム分けでグー勝ちのチームだったから、チームが専攻だ。



おっしゃ来い!と、気合を入れた



「フッフッフ、さあ、手加減無しだ!」

「いやだから手加減しろって!!」



言ったに、思わず返してしまったり。