「おかえり、」











「ごめんっ!ほんっとーに、今回ばかりはすまんかった!!」


パンっと手を合わせて、が言う。


そんな彼女を横目で見て。


「べっつにー。ぜんっぜん気にしてないしー」


ムッスーと腕を組んでが言い、朝食を口に運ぶ。


花火を終えて帰ってきて、
一応もう一度たちの部屋をノックするもやはり反応はなくて。


結局は、カイトの部屋で一夜を過ごしたわけで。


別にやましい事も何もなく、夜は過ぎ朝になり。


だって結局、普段もカイトと同じ部屋で寝起きしているわけだから
今更どうこうなんてあるわけもないし。


ようやく目を覚まして状況を理解したらしい達が
カイトの部屋に突撃してきたのは、朝の9時を回った頃だった。


ようやくまともな服を手に入れて、
はずっとこんな調子だ。


別にカイトと過ごした一夜が嫌だったとかでなく
気持ち的にコノヤロウな感じなのだ。


「カイトー。デザートにがアイス買ってくれるってー。
 しかもドルチェ。」

「えっ本当ですか!?」

「あ、コラくそっ」


ずるいぞ!とか文句を言うを無視して、
ニヤリと笑う。


それで手を打ってあげようってんだから、感謝してよね。


言うと、はグっと言葉を詰らせた。









「じゃーねー。
 また時間があったらみんなで集まろー」

「はいはーい、んじゃねー。」



バタン、と車のドアが閉まる。


2日目の今日は、同時に最終日でもあるわけで、
午前は皆でお土産を買ったりしながら。


午後はゆっくりとドライブを楽しみながら
皆を家に送り届けた。


残りは、自分達の家に帰るだけだ。


「あー、何か散々だった気がするなー。」


ビーチバレーで負けるわ、途中で雨に降られるわ
メイド服は着せられるし、挙句の果てには、部屋の締め出しまで食らって。



「でも、楽しかったですよね」

「まー、何だかんだでね。」



肩を竦めながら言う
やれやれ素直じゃないな、なんて思いながら。


明日から、また日常に戻るんだなぁと思う。


少し、不思議な感じがした。


たった2日間だけの日常から離れた日々が
なんだか物凄くこゆかったんだなぁと感じた。


「ねえそう言えばカイト。」

「はい?」

「そのー、昨日の夜言ってた
 枡田さん・・・・だっけ?心配してるんじゃないの?
 急にカイトがいなくなっちゃってさ。」


ハンドルが左に切られて、遠心力で体が傾く。


の心配に、カイトは「ありえないですね、」と即答した。


「枡田さん、そういうキャラの人じゃないですよ。
 どっちかって言うと、いなくなって清々したってトコじゃないですか?」

「・・・・ねえ、なんか私
 カイトのその即答ぶりにちょっとした不安を覚えるんだけど。」


一体どんな人なのよ、その人。

言えば、カイトはちょっと遠い目をしていて


何ていうか、聞ける雰囲気じゃなかった。



馬鹿な話をしていれば、いつの間にやら家に辿り着いて
適当に庭に車を駐車して、荷物を下ろす。


見上げた我が家は、一晩いなかっただけで
少し懐かしいような気がするから、不思議だ。



「あー、つっかれたーぁ」



ホっと息を吐いて、玄関に大荷物をドサリと置く。

これからビーチボールの空気を抜いて干したり、
旅行中の洗濯物を洗ったり、荷物を片したり。


結構な量で仕事が残っている。


けれども一先ずは休憩、だ。


家の中に上がって、伸びをする。



「お疲れ様でした、マスター」

「んー、カイトもねー。」



言われて、手をヒラリと振って。


玄関先で、靴を脱ごうとしているカイトを見つめる。



「カイト。」


「はい?」



フと、カイトを呼んで、視線が合う。


は、ニコリと笑んだ。



「おかえりなさい。」



カイトは一瞬目を見開いて



「ただいま、マスター」



少しの間の後に、微笑を返した。