長かった夏休みが、明けた。


約2ヶ月の夏休みは、色々として過ごす内に
何故か呆気なく終わってしまい、その感覚も2回目な訳だが
割と一回目と同じような感想だった。


始まってすぐは長いと感じ、中間辺りでは退屈になり・・・


終わってしまえば、あと一ヶ月くらいあっても良いような気がしてくる。


そんな感じだ。


夏休み明けのオリエンテーション期間は
ダルダルとした様子で過ごし、


けれども、数週間も経つと、そうとも言っていられなくなってきた。



現に今、は忙しくなりつつある。



季節は夏の熱い風が冷え始める、10月。



気付けば、学園祭まで一ヶ月を切っていた――・・・・








悪巧み





「と、言う訳で、だ!!」


バンっ!と学生ホールの長机を
乱暴に引っ叩いたのは、だった。


それにビックリした様な視線を向ける人が、チラホラと。


この仲間内でさえ、驚いたようにして固まっている人間が
数名と言わずに居るほどだ。



「ウチのコースでも何か出展したいと思うわけだが!
 此処はやはり、心理コースという事で、メイド・執事喫茶を――・・・・」




が、の頭を盛大に引っ叩く。


先程、が長机を引っ叩いたのと、同じくらいの強さで。



「司会進行、ちゃんとやってね?」

「はーい・・・・」



ニッコリ。


言ったらは小さくなった。


今現在、お昼休みを迎えている時間な訳だが、
この学生ホールの一角を勝手に占拠して、
心理コースの2年が学祭の催し物を決めている。


普段はそこまで共に行動していなくても
そんな2人のやり取りを、それとなく慣れているコースのメンバーは
苦笑して見守るに徹していた。



コホンっと、がわざとらしく咳払いをする。



「えーそんじゃ改めて。何か意見ある人ー!」



ハーイ、とハイテンションでが手を挙げれば、
人数も然程おらず、中々に仲の良い集まりのコースメンバーだ。


クレープ屋、たこ焼き、チョコバナナなどありがちな出店から、
ライブ、演劇、漫才などの催し物。


カクテルバーや大西焼きとか言う変り種も出てきた。


因みに『大西』と言うのは、我が校の名物教師だ。


内容はたこ焼きの中身をチョコやらウィンナーやらにしたようなものだが
毎年何処かしらのコースが出店をしているらしい。



「うーん・・・・何かこう・・・パっとしない?」


「去年はクレープだったっけ、やったの。」


「うんー、でもコストがちょっとねー」



効率中々悪かったよーと悠姫。


昼休みが明けるまでにはまだ多少の時間があるが、
それにしても、皆が頭を悩ませ始めて、収拾が付かない。



パンっと手を叩く乾いた音がする。



音の主は、変わらずだった。




「じゃ、やっぱりメイド喫茶だな!萌えと癒しの配信だな!!!」


「・・・・・・ああ、そっか。それ良いかも。」


「はっ!!?」




の言葉に、またが止めてくれるか、と思っていたら
思いがけず、はそれに同意を示した。


「ちょっ、頭打った!!?大丈夫!!!?」


盛大に心配するヒロ

思いがけない返答に、自身も固まっている。


いや、そうじゃなくて、とは苦笑を返した。



「メイド喫茶の方じゃなくて、
 癒しの配信云々かんぬんの方。」


「えー、出来ればメイドの方を・・・・」


「ウルサイ。・・・・無難に喫茶店は?
 提供するのはハーブティーとかにして、
 雰囲気も、ちょっとシックな感じにしてさ」



ちょっと落ち着いた感じの休憩スペースってのは?と


おお、と声が上がった。


「ちょっとメンバー回すの大変そうだけど
 王道って感じで悪くないかもねー」


「えー、メイドー・・・・」


「制服ちょっと可愛くすれば良いじゃん。皆で作って。」


「オケ、それ採用で!!」



制服のデザインは私に任せて!と


普段から、やれコスプレだ何だ、と彼女は被服には長けている。

何より彼女は一応、被服系のサークルにも所属しているワケだし。


確かに任せても平気だろう。

ちょっと色々怖いだけで。


「あれ?でものサークルも、
 確かイベント系の出し物するよね?」


そんなにやって大丈夫?


が聞けば、
「デザインと型紙くらいなら余裕!」と頼もしいお答えだった。


そんな訳で、その意見に大きく同意を示したのは、
普段一緒に居るメンバーだが、他のコースメンバーも中々に好色だ。



「よし、んじゃ今年の催し物は
 癒しを提供する喫茶店!異議はあるか!!」



偉い熱血に尋ねたに、苦笑しながら
結局それに対する反対意見は特に上がらなかった。



「んじゃ、とりあえず今日はこれで解散――・・・・あ。」



が、手元のプリントを見ながらハタと思い出したように言う。






「え、な、何?」


「個人的なお願いなんだけど、さ?」


何だろう、と首を傾げたところで、
の視線がニヤリ、とに向いた。



・・・・・あれ、何か嫌な予感・・・・・