今日と言う日は貴方の為に 頬を撫で過ぎ去る風が気持ち良くて、は目を細めた。 一時間のドライブを楽しんで辿り着いたフラワーパークは 秋を迎えて、鮮やかな紅に染まっていた。 春は色取り取りに咲き乱れる可愛らしい小花を、 夏には太陽の下揺れる鮮やかな大輪を そして秋には、赤や黄色に衣替えする木々を楽しめるこの場所は カップルも勿論いたが、子供連れの家族や、有料だけれど ゆっくりと楽しめるからだろう、お年寄りのお散歩にも 使われているようだった。 夏には賑わうだろう噴水前も、今は心地良い風のお陰か 少し休憩にベンチが使われる位の人並みで 一通りグルリと散歩をしてきたとカイトは、 その場で少し足を休めていた。 いくら私服とは言え、やはりカイトは目立つ。 目立つけれども、顔は良いのだ。 それがまた目立つ原因ではあるのだけれど、 何というか・・・・慣れて来てしまった自分としては、 青い髪とかあまり気にならなくなっていて 格好良い男性と、 休日を楽しむと言うシチュエーションのみを楽しむ事にした。 パーク内は紅葉狩りの季節だからか、 広場の所々に、屋台のようなものが出ていたりする。 肌で感じる空気に、それとなく胸が騒ぐのは、 やはりお祭り好きの性というか・・・しょうがないのだろうか。 「あーっ何か此処に来たのすごい久しぶりだから、 ちょっと楽しいかも・・・・」 「そうですか?」 「うん、何年ぶりかなー。」 そんな事を言いながら、指折り数える。 小さな頃なら兎も角、それなりの年になってくれば、 こんな所に来て喜ぶことなど、それこそデートの時位なものだ。 そのデートだって、よっぽどの事が無ければ来ないし 友人となんて余計にだ。 ただ散歩して視覚的に楽しむ、のんびり系スポットに来るくらいなら まだショッピングやらゲームセンターとか、自分もワイワイと参加できる所に行きたい。 若い内なんてそんなものだろう。多分。 何でわざわざ厳しいお財布事情を削ってまで 植物見に来なくちゃならんのだ、とか思ってしまったり。 そんなだから、ここ最近随分と来ていなかった。 「前に来た時は、誰と来たんですか?」 「・・・・・・・まあ、ね、うん。 こ、細かいことは言いっこなしよ!うん!!」 「えー・・・何か、怪しいですよ、マスター?」 「う、ウルサイな!!良いでしょ別に!!」 「えええー??」 「〜〜〜〜っなぁによ!元彼よ!!悪い!!?」 雀の涙ほどの男性遍歴でも、無いわけじゃないんだからね!多分!! 言うとカイトは、 「ああっ前に見かけた写真の人ですね!」と懐かしい話題を引っ張ってきて ええいっそれは忘れろと言うとるに・・・・っ!! 「そ、そんな事より、これからどうしよっか? 時間も時間だし、お昼でも食べる?」 場所が場所だけに、ピクニック気分でお弁当を持ってくる人が多いが 一応簡易的に食事を取れる施設も存在している。 それが意外と、窓からの眺めが良かったりするので 自分的には気に入っている。 カイトは、無理やりな話の逸らし方に苦笑しながらも 「そうですね、」と同意を示した。 くそぅ、何だかもの凄く悔しい気分。 その後も、ご飯を食べて、また園内を巡り、 途中の出店でソフトクリームを買おう、いやソフトクリームなんて邪道だ 何おうっご当地のソフトクリームを食べずして何がアイス好きだ、と言うような 何かちょっと外れた談義をしながら 森林公園のような広場で、アスレチックに挑戦してみたり 巨大迷路で本気で道に迷ったり、水場にいた鴨に餌をあげてたら 鯉とか思いがけず大量に集まってきちゃって鳥肌物になってみたり。 兎に角、学祭の忙しさを忘れて、自然の中で遊び倒した。 流石に疲れたぁ、と再び噴水広場のベンチに凭れた時には、 陽が西へと傾き始めた頃だった。 「そりゃ、アレだけ遊べば・・・・」 「ふーんだ 良いんだもん、今日は遊ぶって決めたんだもん。」 「ふーんだって・・・マスター・・・・」 自然の中で子供に戻って遊びすぎただろうか 何か色々子供帰りしている気がする。 苦笑したカイトに、ムゥっと顔を顰めながら けれどもカイトは、同じようにベンチの隣に腰掛けて 優しく笑いかけてきた。 「マスター、楽しめました?」 「そりゃあまあ・・・・見ての通り。」 「なら、良かったです」 言って、ニッコリ。 ん?と何かが引っかかって、眉を顰める。 カイトは笑みをこちらに向けたまま 「マスター、最近根詰めてたんで、」と続けた。 「・・・・・・・・もしかして私、やられた?」 「少し、やっちゃいましたかね?」 「うっわ、何かちょっとムカつく。」 「そ、そう言わないで下さいよ・・・・」 ムスっと返したら、カイトの笑みが少し引く付いた。 確かに、リーダーとかにされちゃって ちょっと頑張らなくちゃとか思って、休日も夜遅くとかまで 割と頑張っていたけれども 今回の唐突な申し出は、確かに カイトの「構って」もあったのだろうが・・・・ 「何、兄貴もグル?」 「え・・っと、ちょっとだけ。 あ、でもチケットは本当に、たまたま貰っただけらしいですよ?」 「ふーん・・・・?」 要するに、カイトと兄貴揃っての息抜き大作戦か、コノヤロウ 「って、それ罰ゲームじゃないじゃん!!」 「え、あれ?そうですか??俺、これで満足ですよ?」 俺も十分楽しませてもらいましたもん、とか言われても 何か納得いかない事この上ない。 何か、何かが駄目だ、自分の中で。 カイトはうー・・・ん・・・っと唸って あ、そうだ!と手を打った。 そして、ニッコリ笑顔。 「じゃあ学園祭。」 「ん?」 「俺、2日目の午後に行きたいです ![]() ・・・・・・・・・・・・・・・・。 「だ・・・・っだだだだだだめっ!!それは、絶対駄目!!!」 「えー、何でですかー?」 「だ・・・って・・・わ、私2日目忙しいから相手できないし!!」 「良いですよ?俺邪魔にならないように 遠くの影から見てますし。」 「怖いよ!!ってか駄目!2日目だけは!!特に午後は・・・っ!!!」 それだけは、駄目だ。 絶対に、駄目だ。 えー、でもさんが――・・・・と、その名前をカイトが出すと、 今度は掴み掛からん勢いでカイトに詰め寄った。 「ちょっ何!!?が何!!あの馬鹿何言ったの!!??」 「2日目の午後が盛り上がるから、に言ってみろって。」 何の事だか分からなかったんですけどね、とカイト。 あんの馬鹿ーーっ!とは頭を抱える。 それでも、カイトが詳しい事情まで知らないのは、正直助かった。 助かった・・・けど・・・・・ 「俺だって盛り上がってるところ見てみたいです、」 「う・・・・・っ」 「今回のが納得できてないなら、 それが罰ゲームって言いたいんですけど・・・・」 「うう・・・・っ」 「それとも、何か不都合ありますか?」 「ううううぅぅぅぅ・・・・・っ」 それなら無理にとは言いませんけど・・・・と 素でしょぼくれるから、達が悪い。 そこまで真面目に言われてしまって、逆に退路を立たれた気分だ。 「マスター?」 「わ・・・・か、ったわよ・・・・もう・・・・」 ああ駄目だ、自分押しに弱すぎる。 結局白旗を上げてしまったのは自分で 余計な事を吹き込んだを恨み、 それを間に受けて言うカイトも恨んだけれど 何よりも、カイトに甘々な自分の対応を、恨んだ。 「それで、2日目には何があるんですか?」 「っ秘密!!それだけは、絶対に、当日まで秘密!!!」 「えー?」 「えー?じゃない!!」 「でも、当日には教えてくれるんですよね?」 「へ!?あ、いや、あーえっと・・・・ えー・・・あー・・・・あー・・・・ホ、ホラ! そうだ、折角だし、写真撮ろう、写真!!!」 そんで母さん達に送ってあげよう!ね!!! やっぱりかなり無理矢理な逸らし方の話に けれどもカイトは苦笑しながら、 それ以上の追求もせずに頷き、立ち上がった。 「あーもーっこうなったらヤケだヤケ!! 体力回復も出来たし!学祭に向かって突っ走ってやる・・・っ」 「はい、頑張ってくださいね、マスター」 一人ブツブツと言っていた言葉にまで律儀に返事を返して その辺にいた老夫婦に頼んで、持参したデジカメで2人並んで写真を撮る。 鮮やかな紅葉を背景に並ぶ2人は それでも割りと、いい顔をして写っていて 学祭まであと一週間 秋はいよいよ、深まっていた。 |