「お疲れ様ー」 「意外や意外、綺麗だったわー」 「ま、合格点かな。」 ショーを終えて、高揚する気分のまま再び控え室へ戻ろうとしていると、 声を掛けてきたのは、見学をしていたらしい悠姫とヒロ、で。 「あれ?ヒロ、喫茶店の方は?」 「あー、そろそろ客がハケだす頃だからそんなに混んでなくてさ。 他の子に任せてきちゃった。」 言われて周りを見回せば、確かに お昼を回る頃に比べて、人混みは少ない。 そろそろと、学園祭も終わりを迎える頃だろう。 「今日打ち上げあるってよー、」 「え、なに、今日やんの?」 「ほら、鉄は熱い内にってさ、」 「それ、なんか違くない?」 そんないつも通りの会話を繰り広げながら 悠姫が、ひょいっとカイトの方を振り返った。 「カイトさんも来ません?打ち上げ」 「・・・・・・・・・・へ?」 酒は飲んでも何とやら 「それじゃぁ、学祭の成功を祝してー、」 かんぱーい!!! 音頭を取るのは相も変わらずだ。 最早誰も異を唱えるものなどおらずに、かんぱーい!と それぞれ近くにいたもの同士でグラスをぶつける。 あちらこちらでカツン、と高い音が響く中、 と、隣に座るカイトも、グラスを軽く鳴らした。 「それにしても、良かったんですかね、」 「まー、良いんじゃない? 流れとは言えカイトも学祭に参加しちゃったんだし。」 みんなも良いって言ってるんだしさ。 言って流し込んだモスコ・ミュールに、カイトも同じようにカシス・サワーを流し込む。 今日一日、客の呼び込みに声を出していたからだろうか、 弱めのものとは言え、アルコールが喉にしみ込む。 今日は、打ち上げと言う名の飲み会になることは理解していたので、 帰りはタクシーを使って帰ると、予め兄に了承を取ってある。 つまり、車の事などは気にせず飲めるわけだが――・・・・ 「今日こそはの事潰すからね!!!」 「っええ!!?何その宣言!!!」 アルコールを入れたせいで、いつもより更にハイテンションのに 指差しで言われた言葉に、うっかり咽こみそうになった。 それをなんとか押さえ込み言うと、 「「さんせーい!」」と明るい声が2つ重なって、 見ればやはり、早速アルコールを回しているいつもの2人だ。 「だって、いっつも酔い過ぎない程度に〜、とか言ってさー」 「しかもアンタ強いから、酔ってるのか酔ってないのか分かんないんだもん。」 「ちょっ、だ、だって全員潰れたら アンタら介抱する役だれがやんの!!」 それに今日はカイトもいるし、尚更酔えないって!! 言ったら、何言ってんの!!!と3人に声を重ねて言われた。 「だから、ちゃんとを家に連れて帰ってくれるように、カイトさんがいるんじゃない〜」 「え、俺今日そんな役どころなんですか?」 予想外の役回りに、思わずカイトが自らを指差す。 うん、と3人の声が再び重なった。 なんでお前ら、そんなところで意気投合してるんだ。 向かいに座っていた、同じコースの子が、カラカラと笑う。 「あはは、今日は逃げられそうにないねー、ちゃん」 「えぇー・・・・?マジなの?」 「ホラホラ、早速グラスが空になってる!!追加頼む人ー!!」 「あ、私飲むー!」 「アンタは弱いんだから少し自重する!!!」 「あ、なァ、追加頼むならつまみも!俺これ食いたい!!!」 「あー、あんたは酒飲まないしね、それくらい良いんじゃない?」 「あ、ー、これ飲んでこれ。あたしあんま好きじゃなかった。」 「ちょっ、そうゆうの回す?普通、」 「大丈夫大丈夫!ならいけるってー」 学祭の余韻も残って、場は既にてんやわんやだ。 は、友人に回されたアルコールに口を付けながら カイトの事を見上げる。 カイトは、苦笑して頷いて返した。 「良いですよ、俺は。 ちゃんとマスターの事。連れて帰りますから。」 「・・・・・・・あたし潰すって、どんだけ飲ませる気なんだか、全く・・・・」 ため息をつきながら、努力するわ、と 果たして何に対してなのか分からない事を言って、はグイっと手元のソレを飲み干す。 「追加お願いー!」 「えぇ!!?早っ!!!」 「私潰すなんて言ってんだから、あんたらも覚悟しなさいよ?」 「うわ、怖っ」 どうやら『潰れる努力を』という意味合いらしい。 カイトも、手元のアルコールに手を付けて、手近な料理に手を伸ばした。 |