20XX/12/12 16:42
From:悠姫
To:ヒロ
To:
Sub:X'masパーティのお知らせ

----------------------------------

聞いてよ〜+.゚.+'><。!!

X'mas一緒に過ごす予定だったのに、
カズさん仕事入っちゃったって×××

さみしすぎる〜・ω・`

って事で、腹いせに女の子だけで集まって
X'masパーティ開いちゃおうと思います"o*・ω・*o"

参加する人は挙手
ってゆーか、いつものメンバーは強制参加笑"


----------------End----------------




お昼過ぎに唐突に届いたメールに、は苦笑いをする。


パタンと閉じた携帯に、フっと天井を仰いだ。


赤や緑、金色の布が垂らされて、其処に描かれる、白い羽の天使達。


たっぷりの白いひげを顎に蓄えたサンタは、小さな子ども達に手を振って

天井に届いてしまいそうな程大きなツリーには、色とりどりの飾りつけ。

もう少し陽が傾けば、ここに小さな明かりが
いくつも灯されて、更に華やかになるだろう。


入用で買い物に出掛けただけだったのだが、
すっかり赤と緑に彩られた街並みと、悠姫からのメールとで、
フと現実に戻ったような、夢心地の気分で、思う。


ああ、もうそろそろ――クリスマスが、やって来るのだと。











白く染まる町並みの中







「マスター、どうしました?」


苦笑いで携帯を閉じたに、
隣を歩いていたカイトが首を傾げる。


は「んー?」とソレを振り仰いで、



「クリスマスのお誘い、」

「・・・・・男の人ですか?」

「残念、いつものメンバー。」


そんな華やかな展開になる訳ないじゃん〜とが笑う。


それ、言ってて寂しくなりません?とか
余計な事を言うカイトの膝裏に蹴りを入れた。


結構本気で痛がっている彼をスルーして、
そろそろ薄暗くなり始めている扉の向こう側を見やる。


自動ドアは引っ切り無しに人を中へ外へと導くが
店内に入ってくる大半は寒そうに手を摺り合わせ、
外に出て行く大半もまた、寒そうに身を縮める。


初雪が降ってから、早数日。


そろそろ本格的に積もりだすかな、と苦い笑いが再び零れた



「しかしクリスマスかぁ・・・全く予定考えてなかったな。」



バイト入っちゃってるかな・・・と腕を組む。



「マスター、結構季節感疎いですよね。」

「そんな事ないよ!!
 ただ今年は学校でもアドベントに出られないから・・・っ!」

「あ、マスターの学校、一応クリスチャン学校ですもんね」


すっかり忘れてました、


カイトは言うけれど、何とも言い返しようが無いのは、
確かに自分の学校はクリスチャン学校で

クリスマスには力を入れているから、
校内のそこ等中にツリーやらの飾り付けがされているというのに
今の今まですっかり忘れていた自分がいるからで。


―― 季節感、こんなに疎かったっけ、私


あれえ?と首を捻ってしまうところである。



「カイト、何かクリスマスに欲しいものある?」

「え?えー・・・・っと・・・・急に言われても・・・」

「あはは、だよねー」


まぁ、まだクリスマスになるまでは時間もある。


それまでに考えといてよ、と肩を叩くと
カイトはまだ難しい顔をしながら「頑張ります」と唸った。


何を頑張るつもりなんだろう、とは
思ったけれども口には出さないでおいた。



「マスターこそ、何か欲しいもの無いんですか?」


「えぇー?欲しいもの・・・・・んー・・・・・」



逆に質問を返されて、困る。


そんな急に欲しいものと言われても――ってアレ、
なんかちょっとさっきの会話にデジャヴだ。




「・・・・・・・ちょっと待って、頑張って考えとく。」


「じゃあ、お互い頑張りましょうね、」


「・・・・・・・なんか可笑しくない?」


「・・・・・まあ、良いんじゃないですかね」




何をどう根拠にとってソレを言うんだ、と思うが
見合わせた視線に零れるのは思わず笑いで


まあ良いか、と、完全に毒されてしまっている自分がいる


―― いや、毒を抜かれてしまっている、が正しい所か。


兎も角、そろそろ外は暗がりになる。


「・・・・・・・買うもの買ったし、そろそろ帰ろうか」


「あ、そうですね。」



もう帰って夕飯の準備しないとですし、とカイトが言う。


今日の夕食当番はカイトだ。



「今日、何か食べたい物とかあります?」

「んー・・・あ、シチュー食べたい!何か冬って感じで!」

「あ、」

「ん?」

「季節感に疎いマスターが珍し――痛っ!!」



流石に、二回目だ。


膝裏を、さっきよりも強く蹴ってやった。


「〜〜〜〜マスター酷いです!!」

「あれ?そう言えばそろそろ
 カイトのアイスが切れる頃じゃなかったっけ?

「マスター優しい!まるで女神様ですね!!」


・・・・・ゲンキンなヤツめ。


横目で睨んだカイトは冷や汗顔で笑っている。


って言うかこの寒い中でアイスアイスと煩いコイツに
季節感に疎い云々を言われたくない。



腰に手を当てて、荒く息を吐いた。


「ったく・・・・・まあいいや。帰ろうか。」

「はい、じゃあ今日はきのこたっぷりのシチューにしますね」


冷蔵庫の中に結構きのこ類多くありましたよね、

確認するのは、昨日夕飯当番だったにだ。


は、冷蔵庫の中身を思い返しながら頷く。


確かに、この間きのこ類は種類豊富に冷蔵庫に入れたまま、
まだ使っていなかったはずだ。


「あと何処かパン屋さんでおいしい食パン買ってこうよ、」

「あ、良いですね。なら駅前のパン屋が良いです」

「んー・・・・ま、いっか。駅前まで回って行こう。」



最近ではカイトもすっかりこの辺の地理には慣れたもので
何処の何が美味しい、なんて情報は、かなり豊富に頭の中に入っているらしい。

時には、が知らなかった店を教えてもらうほどだ。


流石に、いつまでも家に引き篭もってばかりもいられないようで
徒歩や自転車やバスを利用して、行動範囲を急速に拡大している模様だ。


「じゃ、パン屋に寄って・・・・・スーパーは?買うものある?」

「んー・・・・きのこがあるなら後は特に。有り合わせで作っちゃいますから」


なんとも主夫に磨きが掛かって有難い事だ。


少し、乾いた笑いが漏れた。


「それじゃ、そろそろ――・・・・・」



言った言葉は、思いがけず遮られた。


けれどもそれは、隣を歩いていた
カイトによってではない。



「―――・・・・・?」



名前を呼ばれて、振り返る。


先にいたその人に、は目を見開いた。