「ねぇ、ラビ?」
隣でまどろむ、ラビの紅い毛を梳いて名前を呼ぶ。
ラビはまだ眠そうに「ん?」と答えて
「好きよ、」
その答えに返すように、それだけ言う。
夏の蒸し暑さに、白いシーツは冷やりとして心地いい。
密度の高い部屋に夜風が舞い込んで、微かに音を立てた。
ラビは気持ち良さそうに目を閉じて、甘えるように「俺も」と返す。
「ねぇ、ラビ」
「んー?」
「今ので、何回目の『好き』?」
問えば、少し間が空いたけれども
「548回目。」
多分正確であろう答えは、確実に返ってきた。
「そっか・・・まだまだ少ないねぇ」
言って、苦笑する。
ラビは「そうさ?」とか言って、少し困ったように笑ってた。
「ラビはすごいね」
「何がさ」
「私が忘れちゃってるような事、ずっと覚えてるの。」
「・・・仕方ないさな。
職業病みたいなもんさ。」
「うん。でも、すごい」
職業が何だかんだと言っても、
結局其れを覚えているのは彼自身だ。
ともすれば、やっぱりラビはすごいと思う。
言った言葉を一字一句覚えていられるのは、
多少恥ずかしさはあるものだけれども・・・
「ラビ、おめでとう。」
「ん?」
「誕生日、おめでとう。」
唐突の言葉に首を傾げたラビに、言葉を補足して言ってやる。
ラビは、納得したように笑った。
「それで6回目の『おめでとう』さ。」
「たったそれだけ?」
「一昨年が3回、去年が2回で、今年が1回目。
あ、でもさっき2回言ったから7回目か。」
「・・・それでも、ラビの生まれた年には追いつかないね。」
残念そうに言うと、ラビが柔らかく髪を撫でた。
その感触を楽しむようにラビに擦り寄る。
「・・・流石に夏は暑いね。」
離れた方が良いかな?
少し身を引いてそう問えば
「ダメ。このままで良いさ」
言って、ラビは一層抱え込む。
触れ合う肌は熱くて、それでも気持ち良い。
「ねえ、ラビ?」
「ん?」
「いつかは『ラビ』って名前じゃなくなるのよね?」
「・・・ああ。」
「・・・・悔しいなぁ・・・」
言ったら、怪訝そうに眉を顰める。
だって、と続けて、ラビを見上げた。
「今までラビが記憶した、私が『ラビ』って呼んだ回数が
全部振り出しに戻っちゃうんだよ?」
多分誰よりも、自分はラビの名前を呼んでる。
それは、自分だけの『特別』とも言えるほど。
だからこそ、他の人と同じ振り出しから再びスタートさせる事は
自分にとってどうしようもなく悔しい事だった。
「―――・・・。」
ラビが名前を呼ぶ。
もしかしたら彼は、自分がこの名前を呼んだ回数も
記録しているのかもしれない。
「俺が今まで呼んだ名前で、一番回数多いんは、お前なんさ」
「そうなの?」
「そうなの。
俺がお前を呼んだ回数は、変わらんさ。」
虫の声が、窓から入り込む。
高く、羽を擦り合わせて空気を震わせる、夏の音。
ラビは「それにさ、」と続けた。
「お前が今まで言ってくれた『愛してる』も、『好き』も、『おめでとう』も、
全部、変わりなく俺の中にある。」
消える事無く、此処にある。
此処に、お前が居る。
重ねた回数だけじゃない、お前の心ごと、全部。
それって、回数以上に大切な事だと思わねえ?
ラビは、言って微笑んで、
「・・・・そう・・・かもね、」
ラビの顔を見る。
相も変わらず、少し眠そうな顔。
「でも、相変わらず恥ずかしい事サラっと言うなぁ」
「何回でも言ってやるんさー。
忘れっぽいお前が忘れちまわねーように。」
互いに笑って、おでこを合わせて、
「・・・忘れないよ、」
「本当か怪しいさー」
「忘れないよ、絶対に。」
ラビがこうやって抱きしめてくれた温もり、力、髪に掛かる吐息も
いつだって優しく呼んでくれた名前、甘く囁いてくれた愛の言葉
「・・・・忘れない」
「・・・・・・・・・。」
ラビが僅か呟くように名前を呼ぶ。
合わせた額は自然に離れ、また、自然に唇を合わせた。
ゆっくりと、お互いを確認するようなキスは長く続いて、
やがて温もりが伝われば、名残惜しむようにソっと離れる。
「・・・・・・・愛してるさ。」
「・・・・・・・うん。」
ラビの胸に耳を付けて。
その確かな鼓動を聞きながら、目を閉じた。
「ねぇ、ラビ」
「・・・・ん?」
少し、眠そうな声。
くすり、
僅かに微笑を漏らして
その眠そうな顔に、もう一度口付けを落として
「今ので、何回目のキス?」
「――――・・・・。」
愛 し て る と 、
何
度 で も
幾ら言葉にした処で、乾いた僕たちには全然足りないんだ。
日記にて祝ったラビしゃん生誕祝い。
彼だけしっかり日にち通りに祝ってる辺りがきっと愛の差。爆
こんなんでも一応、無期限フリーだったりするのです。
BGM by litty / Image by あんずいろ]
- CLOSE -