それは、ある昼下がり。

何の前触れもなくフっと気付いて、ああそうか、と納得する。


コイツって、晴れ男なんだな、と。


それは本当に何の前触れもない、唐突に舞い降りた思考で、
よくよく考えてみれば、彼との任務はいつでも晴れだ。


そう言えば、コイツ自身も太陽みたいに暖かくて、晴れっぽい。

陽射しに透けた時の髪の色なんか、そんな感じだ。


うん、ますます晴れっぽい、コイツは。


そんな思考で、一区切り。


晴れっぽい――けどね。


任務から返ってきて、部屋に押しかけてきたと思ったら、
人のベッドを占領してぐっすり眠ってしまったラビ。

その寝顔を見ながら、頬杖を着く。

ほっぺとか、突いても起きないんだろうなぁ、と。

ぼんやり見つめながら、思いながら、溜め息をつきながら。


―― 晴れっぽいけれど、ちょっと違う。


夏の日差しは当てはまらない。春だとちょっと遠すぎる。
冬だとちょっと他人行儀で、秋の空じゃ寂しすぎる。

晴れっぽいけれど、ただ晴れているだけじゃない、

ラビはきっと、そんな人。



「木漏れ日・・・・とかね。」



5月の空の木漏れ日とか。

新緑に映える、深い蒼をした空の季節。

さらりとした風に靡く葉々が、儚く木漏れ日を揺らす。


全ては、見せてくれない光。

掴み処もなく見せては消えて、消えては魅せ、また別の場所。

葉の向こう側は確実に晴れているのに、
深い影が仮面の様に覆っていて、全ては見えない。

それでも全てが仮面でもないから、きっとラビは、そんな人。


無防備に見せている様で、実はほんの少ししか見せてくれない。
そのほんの少しは、確実に彼だから。


全てが仮面なのだとしたら、たまには全部見せてみろ馬鹿と言えるけど
全てが仮面でもないから、その真っ直ぐで風任せの気まぐれな光に縋るしかない。


本当に、タチが悪いヤツだこと。



「んー・・・・、おはようさぁ・・・」


「おはよ、まだ眠そうだけどね。」


「ね、むいぃ・・・・」


「コラコラコラコラ、おはようと言ったからには起きなさい。」


ほら、しゃきっとする!

ぼんやり上半身を持ち上げるラビを背中から支えて、
今にも再びベッドへダイブしそうになるのをブロックする。

ラビは低く唸りながら、頭を軽く振って眠気を逃がしていた。


「・・・雨か。」


「ああ、うん。
 ラビが寝てる間に降り出した。」


窓は叩きつけられた水滴でいっぱいで、外は雑音の嵐。

それでもラビが任務から返ってくるまで、空は泣くのを耐えていた。

耐えかねて泣き出した今は、溜めてた分大泣きだったけれども、
きっとその内、落ち着いて穏やかな風を吹かせるだろう。


「ねえ、ラビ。」

「ん?」

「明日、久しぶりにデートしようよ。」

「この天気でか?」

「大丈夫、明日は多分、晴れるから」

「何さ?その確信。」

「ん、秘密」


大丈夫、明日はきっと晴れるよね。

木漏れ日ばかりの気侭な光も、きっと見られる。

そうしたら、久しぶりに近くの公園に行こう。


あそこのベンチに座って、久しぶりに日差しを一杯に浴びてこよう。


春はまだ遠いけれども、きっと冬の風も、気持ちがいいから。


「明日は1日捕まえておくから、」

「何さ?それ」

「気侭に何処かに行かないでよね。」

を置いてどっか行った事なんかねーっしょ?」

「よく言うよ、遊び人。」

「あ、それは心外さ。」


こんなに一筋だろ〜、とラビ。

曖昧に笑って、誤魔化しておいた。


明日はその鬱陶しい仮面、剥がしてやろう。

だから精々、空の雲を綺麗に取っ払って頂戴よ。


明日は晴れると良いね、晴れ男。




全てが仮面なのだとしたら
きっと縋る事さえも許されない、君は雨の空だった




special thanks[哀婉

- CLOSE -