思えば、世界はいつだって醜かった。 欲に溺れる人間はいつの世にもいて、 世界を満たすのは、いつの世も争いと、快楽と、堕落と―― その中で、たまに見かけるまともそうな人間も、 結局はただの人でしかなく 結局は、醜い世界の一部でしかないのだ。 ―― 何を期待するのだろう、自分は いつの世においても、問いかける。 答えはただ、無言を語るのみでしかなく、 その無言の意味を、自分は知らない。 けれどもそんな醜い世界の中で、 貴女を愛しく思ったのは、果たして偶然だったのか 堕落の世の中に見た、一瞬の光――なんて 少々メロドラマっぽすぎる。 けれども、そんなのも嫌いじゃなくて 自分の中で、彼女は確かに人間でありながら 何処か侵してはならない、絶対的な聖域のような気もしていた。 「私も、ただの人なんだけどね」 そんな風に苦笑していう彼女の事も、 嫌いではなかったから。 例えば、この人生が運命なんてものに導かれていたのなら 神は自分にとって呪うだけの対象で けれどその一瞬だけ そんな神に、礼の一つでもくれてやりたい気分になる。 それは、不思議な感覚だった。 気だるい錆び臭さが鼻を突く。 ひとつ、ふたつと、自分の指先から落ちていく雫を ただ何となくという理由で、数えてみる。 血溜りに沈む、白い肌と黒い髪。 ―― 嗚呼、この人は最後まで綺麗なのだな、と思う。 狂おしい程愛してるなんて、有りがち過ぎて冷めてしまうが 本当に狂ってしまったのなら、言葉の方が意味に対してやや劣る。 本当に、本当に 「狂おしい程愛していますよ、」 この言葉を、今の彼女なら果たして何と聞くのだろう。 見開かれた、2つの暗い穴を見下ろす。 何も移さない、純粋な奈落の底。 口元が、笑みに歪んだ。 「最後はどうか、醜く死んで下さい、」 貴女をただの『人間』として、忘れられるように 最後だけは、どうか醜く――・・・・ ―― 嗚呼、 何を期待したのだろう、自分は 無言の答えを聞きながら 指先から紅い雫が、ひとつ、ぽつんと 白い肌に、花開いた |
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