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似たもの同士の僕達は いつでも喧嘩 傷つけあい 労り合えたら 良いのだけれど・・・・ 愛 した私の 負 けでした 神様 蒼我様 メルネス様 アンタ等は、鬼ですか・・・・? いつもと変わらないのは、この穏やかな灯台の街。 子供の無邪気な声 大人の快活な笑い声 ゆっくりと時が過ぎる割に、活気付くこの街。 それと、この2人の仲。 春の陽気に暖かい今日なのに 二人の間だけ、未だ空気が冷え切っている。 後ろから、ついてくる足音。 賑やかなこの街なのに、その音だけが鮮明に聞こえた。 少し気になって速度を緩めると、 ジェイはスタスタと近づいてきて、 華楠の横をスイと、気にした様子もなく通り過ぎてしまった。 嗚呼もう、何故自分達は買出しじゃんけんが弱いのだろうか、と 後悔しても、まあ意味はないわけで、 仕方ないから、追い抜かれたジェイに追いついて横を歩く。 盗み見るように彼の顔をうかがえば、 ジェイはすぐにそれと気付いて、言い放った。 「人の顔なんて見てないで、 さっさと歩いてくださいよ。」 「・・・・わかってるっつの。」 神様 蒼我様 メルネス様 やっぱり、あんた等は鬼だ。 少し歩いて、ウィルの家の扉を開く。 イロイロなグミとか、ボトルとかは、結構な量で正直重い。 ジェイももう少し気を使ってくれれば良いのだが、 まぁ彼はそんな所まで気は回らないだろう。 部屋の扉を開けば、集まって談笑しているセネルたち。 真っ先に気付いたのは、奥のソファに座るクロエだった。 「おかえり、華楠、ジェイ」 「「ただいま」」 ボソッと言ったのに、2人の声が重なった。 キッと2人が睨みあう。 そうすれば、周りからは呆れた声。 「なに、ジェージェーとカーナ、まぁた喧嘩ー?」 「2人とも、本当に懲りないな」 ノーマとセネル。 「ジェイが文句ばっかり言うから」 「華楠さんがいつまでも道具屋に入り浸っているからでしょう」 「新しい道具が入荷されてる事だって在るんだから 少しくらいゆっくり見たって良いじゃん」 「そうゆう事は、一人で行った時にしてくれません?」 「何さ、せっかち。」 「鈍間の華楠さんに言われたくないですね」 お互い顔も見ずに悪口の言い合い。 息継ぎをする間さえないような、一進一退の攻防戦だ。 周りは既に、呆れた息を吐く。 「ジェー坊も華楠嬢も大人気ないのぉ」 「モーゼスに言われるとは、 2人もよほど酷いんだな」 「どーゆう意味じゃウィの字」 「そのままだろう?」 「しかし、そろそろ止めた方が良いんじゃないのか?」 「でもさぁクー。 そろそろ2人の仲に進展があっても良いと思うんだよねぇ・・・」 「進展?」 「お兄ちゃんは良いの。」 「まぁ、みんな仲良しねぇ。お姉さん嬉しいわぁ」 モーゼスがボヤキ、ウィルがからかい、 クロエが心配して、ノーマが呆れ、 セネルの疑問を、シャーリーが斬り捨てて、 グリューネが的外れな呟きをしたころ。 2人の話し合いに、決着がつく。 「もう良いよ! 私が全部悪かったです!コレで満足ね!」 「ちょっ、何処行くんですか!?」 「何処だって良いじゃん!ほっといて!!」 泣き叫ぶような華楠の声と共に、 部屋の扉がバタンとしまった。 呆然とするジェイに、みんなの白い目が向けられる。 「・・・なんです?皆さんして・・」 「なんです?じゃなくって、さっさと追いかけなよ」 バツが悪そうなジェイの言葉に、 ノーマはシッシッと手を振る。 「なんで僕が・・・」 「別に好きな子いじめたくなるのも分かるけどさぁ 言いすぎちゃったんなら謝ってくんのが当然でしょ」 「なっ!だ、ダレがダレを好き・・っ!?」 目を見開き反発しようとするジェイだが、 モーゼスたちは既に ”ほーそうゆう事じゃったんか”だの ”子供じゃないのだからもう少し大人になれ”だの 言いたい放題だ。 「華楠ちゃん、泣いてたわねぇ・・。 一人じゃ、寂しいんじゃないかしら・・・?」 グリューネのその呟きに、遂には、ジェイが折れた。 「~~~少し出かけてきますんで、 皆さんはここで待っててください!」 ウィルの家のドアが再び開かれて そして、閉じられた。 「まったく、何処に行ったんですか・・・」 灯台の街の中を走りぬける。 もうすぐ日が暮れる。 人々は、そろそろと夕食にでも行くのだろうか 街の中は比較的、人が少なかった。 そこ此処の家から、食欲をそそるような 匂いが流れてくる。 グルリと街の中を一周して、 時計台の所まで来て山賊達に聞くと、 先ほど、泣きながら華楠が此処を通ったと言う。 灯台の方へと向かったそうだ。 フウ・・・と溜息をついて、灯台の中へと入る。 昇降機で降りて、まっすぐに海岸へと向かった。 思ったとおり、そこに、彼女の姿があった。 「やっと見つけた・・・」 「・・・・何しにきたの・・・」 海岸に、膝を立てて座る華楠。 膝の上に重ねた腕の上に、顔を伏せているが その声は確かに、涙に濡れていた。 「・・・・別に。 セネルさんたちに探せと言われただけです。」 「そう。じゃぁ見つかったんだから帰ってよ。」 「そうはいきません。 ちゃんと一緒に連れて帰らないと、僕がどやされますから。」 ああ言えばこう言う。 そうじゃないだろう、と自分をどやす。 言いたいのは、こんなことじゃなくて 素直になれない子供は、自分だ。 「・・・・隣、いいですか」 「・・勝手にすれば」 許可を貰って、隣に腰掛ける。 海の音が穏やかで、心地良い。 ”静かの大地” その名に相応しい場所だと思う。 その優しい音に勇気付けられて ゆっくりと、言葉を紡いだ。 「・・・・さっきは、少し言い過ぎました。」 「いいよ・・・・もう・・・・」 「言いたかったのは・・・ ・・・・そういう事じゃないんですよ」 言うと、涙で赤くなった瞳をこちらに真っ直ぐと向ける。 どうゆう意味?と、瞳で訴える。 「だから・・・その・・ ・・・さっきの、口論ですけど」 「うん?」 「・・僕の負けで、良いですよ・・・・」 はぁ・・・っと溜息までも含んでる。 話の筋が通らない、先ほどからのジェイの言葉に華楠は首を傾げるばかりで ジェイはもう一度、溜息。 俯いて、何処か恥ずかしさを隠すように 早口に、言った。 「貴方を好きになった、僕の負けです。」 「ぇ・・・・・」 「わからないんですか?」 本当に鈍間ですね、とジェイ。 言われて、そんなことない!と華楠。 2人ならんで、海をボーっと見つめて ジェイの言葉に、名前2は耳を傾ける 「・・・ノーマさんに言われたんですよ、さっき。 ”好きな子いじめたくなるのも分かる”って。 ・・・悔しいですけど、その通りです。」 「・・ジェイ、私の事嫌いじゃないの・・・?」 やっと涙の止まった瞳。 その問いかけに、ジェイは呆れた。 「さっきの僕の話、聞いてました?」 「聞いてたけど、信じ難いからから・・・」 「・・・・」 言ったら、ジェイは俯いてしまった。 その言葉は、俄かには信じ難い。 けれども、ジェイがただの機嫌取りで こんな言葉を言わない人間だって事も、知っている。 「・・・好き・・」 「ぇ?」 「よかった・・・ジェイが・・・私の事 キライじゃなくて・・・・・」 そう言った華楠の声は、涙腺の緩みでまた涙に混じる。 けれども今度は、うれし涙。 ジェイは、その様子を少し見てから、 おずおずと手を伸ばし、その頭をそっと撫でた。 何回も、何回も、優しく・・・ 「今度、何処か買い物にでも行きましょう」 「・・・うん」 「その時は、ちゃんと付き合いますから。」 「・・・・・うん」 「何かおいしいものでも食べて」 「・・・・う・・ん。」 「2人で、ゆっくりしましょう?」 「うん。」 頷いた華楠。 ソッと、息を吐いた。 好きだから、意地悪だってしたくなる それでも 喧嘩はいつだって 愛した僕の、負けでした。 ― fin... |
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