『仲間』と言うよりは『友人』で、 『恋人』と言うよりは『母親』に似ていた。 母の温もりは知らないけれども、彼女と向かい合った時の温かな気持ちは、 恐らく其れにも相当するのだと思う。 「どうなんだろうなぁ、それも」 そう言って苦笑する貴女が、好きだった。 「ねえ、結局ジェイは、私の事が好きなの?」 「・・・唐突ですね。」 「唐突ですよ。」 読んでいた本から顔を上げる。 が少し不満そうに、カーペットの上で横になり、 クッションに顎を乗せている。 「どうしたんです?急に」 「・・別に嫌いじゃないんだけど、ジェイが私に言ってくれる 『好き』とか、ジェイがしてくれるキスとかは、母親を重ねてる だけの様な気がしてならない。」 「・・・まあ、否定はしませんが。」 実際、既にそのことはカミングアウトしているし。 はズイっとジェイに詰め寄った。 「嫌いじゃないけど、それだけなの?」 近い近い顔近い。 たじりとして後ずされば、彼女は同じくしてその間を詰めて。 とりあえず質問には答えますから離れませんかと言えば 質問に答えるまでは離れませんとのお答え。 ああ、そうですか。 「・・・母親と同じようにしか思えない人に 好きだの言ってキスだのしてって・・・ 一体、僕はどれだけマザコンなんですか・・・・」 呆れた様に言うのだけれども、目の前の彼女は納得しなくて。 やれやれと吐いた溜め息に、じっと待つがいる。 「好きですよ」 「どういう意味で?」 「一人の女性として、です。」 それから、少し呆けたように固まる目の前の彼女 呆れつつもやはりどうしようもなく湧き上がるこの感情を 不器用で下手なりに、精一杯伝えるのだ。 このたった一つの、ある意味卑怯とも言えるような言葉で。 「・・・愛してます。」 「・・・・誤魔化そうとは・・・」 「してませんよ。そこまで往生際は悪くありません。」 「・・・・だね。」 言って、少し情けない顔で笑う。 その顔も、どうしようもなく愛おしいから。 そっと伸ばした手で、彼女の髪を撫でる。 その行為で、ようやくハッとして体勢を理解してくれた彼女は 「あ、ごめん、今退くから」と慌てるけれども 今度は、こちらから其れを止めた。 その額に、一つだけ、キスを落として。 それは、母親にするよりもずっと甘やかな動作を孕んで。 そのまま、彼女の体を、抱きしめた。 「もう少し、このままで。」 「・・・・嫌いじゃないから、良いけどね。」 「・・・貴女は中々往生際が悪いですね。」 「・・・・好き。大好き。 ・・・だから、もう少しこのまま、ね。」 「はい。」 『家族』の温もりだけれども、それは貴女でしか有り得ない。 |
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