日差しが柔らかく差し込む午後


その日は何気ない一日のはずなのに
それは不思議と、特別な日のように思えた。


心の奥が、静かに震える。


これはどこか、感動にも似ていた。


けれども微かに違うそれは、
少し懐かしいような、それでいて、新鮮なような


そんな、不思議な感情だった。


!今日はとこっとん付き合ってもらうからね!」

「よし来た!目指すは景色の綺麗な丘の上だ!!」



ハリエットの言葉に、は拳を握って答える。

自分が仕事で忙しい身であるからか、
ハリエットは理解を示してくれてはいたが、それでもやはり
寂しい思いはあるのだろう。


面倒見が良く、一緒に遊んでくれる事の多い
娘の大のお気に入りのようだった。



―― 彼女が信頼できる人間であると、自分は知っている。



知っているから、娘を一人家に残しているよりは
ずっと安心であったから。



自分は彼女に感謝して。



仲間であり、良き友人であり。



彼女の存在は、それだけだ。


有り難い存在で、いつかそれを、礼として返したい。



どんな関係で、存在だ。


「ウィルさーん、早くしないと置いて行きますよー?」


「もう、パパ!今日は休みだから、
 一緒に遊んでくれるって約束でしょ!」


「・・・・・ああ、すまん。今行こう。」



ゆったり歩いて、2人に歩み寄る。


笑みを浮かべて待つと、
急かす様に駆け寄り、手を引くハリエットと。


やがて辿り着いた彼女の元に、嬉しそうに真ん中を陣取りハリエットは
まるでそうする事が当然であるかの様、とも手を繋いだ。


思わず顔を見合わせるのは、
娘よりは幾分か身長差の狭いとで


彼女は少しの間の後に、はにかむ様な笑みを向けた。


「行きましょうか」


その笑みが、何故かとても眩しくて、自分は頷くしか出来ず。


上機嫌の娘と、仲間であるはずの彼女を連れて
何故だか満たされるものが、確かにあって



「パパ、どうしたの?」


「・・・・・いいや。」



きょとんと尋ねたハリエットに、ウィルは笑みで答えた。


3人の間を、秋の枯れ草の甘い匂いを孕む風が
そよりと流れていく。



この埃を被ったような
それでいて、早朝の朝露のような感情は



―― 一体、何だっただろう?





 単純で、 明快で、複雑な
   この風が、感情の名を示してくれれば楽なのに




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