「春になったらさ、みんなでピクニック行こうよ!」 それは唐突な言葉で。 それぞれが雑談に興じていた中、皆がはたと動きを止める。 今は冬。 ぱちりと、暖炉で薪の爆ぜる、乾いた軽い音がして、 外気との温度差にウィルの家の窓は白く曇る。 家主であるウィルは、 頭が痛いとでも言うように、こめかみに手を当てた。 「何故また、いきなりそういった話になるのだ・・・。」 「なーによー。 良いじゃん別に。今すぐ行こうってワケでもないんだから。」 言った当の本人であるノーマは不服そうに口を尖らせる。 「そういう問題ではなくてだ・・」と、ウィルは尚呆れた様子だが、 「まあ良い」と言って、後に続きそうなお小言を、何とか飲み下した。 そんな様子に苦笑したクロエが、けれども 楽しそうに深く腰掛けた。 「けど、確かにそれも楽しそうだ。」 得られた同意に、パァっと輝くノーマの表情。 釣られるようにして、もそうだなぁ、と微笑み 腕を組んで、片手を頬に添える。 「春になったら・・・ね。 それなら、輝きの泉が良いんじゃないかな?」 「ああ、いいですね。あそこは桜が咲きますから、 きっと、春には見事ですよ。」 「あっそれ良い!んじゃあ、場所は輝きの泉でけってーい! はいっみんな文句ないわね?」 「ヒョオオォッ!!花見じゃ花見じゃ!!」 ノーマの確認に同意するかのように、 モーゼスの雄叫びが上がる。 セネルも少し笑って頷き、シャーリィが、 そんなセネルの様子を覗き込むようにして見た。 「なんだか嬉しそうだね、お兄ちゃん。」 「そうか?」 問えば、シャーリィは「うん。」と笑顔で頷いて。 少し照れくさそうな顔で、セネルは改めて、皆を見渡した。 「なんか・・久しぶりだな。」 「久しぶり・・・?」 「グリューネさんが消えてから、こんな話してなかっただろ。」 言えば、ウィルは納得した様に「ああ・・・」と頷いた。 別に、遠慮をしていたわけではない。 ただ何となく、彼女が消えた後に冬が来て、雪が降り そんなアクティブに動きをとる機会がなかっただけで。 「良いんじゃないかな」 の言葉に皆が振り仰ぐ中、 彼女は笑顔で、穏やかに言った。 「グリューネさんは、 私達に未来を用意してくれたんだから」 楽しまなきゃ損だよね、なんて。 あの人は、あの人自身の存在と引き換えに 自分達にこれからの笑顔とか、希望とかを与えてくれた。 だから、その分を楽しまないと、なんて。 その言葉に、クロエもほんの少し、微笑った。 「・・・そうだな。うん、の言うとおりだ。」 「もたまには良い事言うじゃん! そーそ、楽しんだモン勝ち!ってやつよ!」 「ちょっとノーマさーん、『たまには』の部分、強調したでしょー?」 「あ、あはははは・・・・・」 えー?とノーマに詰め寄れば、引き攣ったノーマの笑い声。 コンニャロウ、とか言いながら、ノーマと戯れる。 そんな様子に皆が笑い、ウィルが苦笑にも似た溜息を漏らしてから。 「・・・それに、きっとグリューネさんも、空で一緒に笑ってくれてます。」 シャーリィが言う。 『いってらっしゃい。』 あの日の、あの5月の風の様な 淡い緑色をした笑みが、フっと、記憶の中に甦った。 皆が口元を緩めて、「よぉ〜し、そんじゃっ!」とノーマ。 「とクー、あとりっちんがお弁当作り、男連中は荷物持ちね!」 あ、ハッチは手出し禁止だかんね!とか言うノーマに、 「ちょぉ待てぇ」とモーゼスが止めに入る 「シャボン娘はどがあすんじゃ。」 「あたし?あたしはホラ・・・か弱いし?」 「か弱いが聞いて呆れますね、まったく・・・。」 「なんだとお〜っ!!」 ジェイに言われて地団駄を踏むノーマに、皆が笑った。 笑って。 ひとしきり、笑って。 それから、ジェイは言った。 「一応聞きますけれど、待ち合わせ場所は?」 皆が顔を見合わせる。 皆が柔らかい表情をしていた。 クカカ・・・と、独特の笑い声が答えた。 「そがあなもん、決まっちょるじゃろ!!」 |
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