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日が暮れる。 そろそろ町では桟橋が上がる頃だろう。 ともすれば、きっとあいつはそろそろ帰ってくる。 時折遅くなる事はあるにすれ、 大抵日没までには帰ってくるのだから、 まったく律儀な性格であると思う。 「ただいま、」と、扉を開く音と、少年の声。 ジャスト日没。 相変わらずキッチリした奴だ。 「おかえりー」 「華楠さん、ピッポ達は?」 「ヨッポ君の家に遊びに行ってるよ?」 そろそろ帰ってくるんじゃないかな。 言えば、ジェイは「そうですか」と、少し微笑んだ。 「どうよ、今日の収穫は」 「全く無し、という訳でもなさそうですよ。」 「お、珍しい。」 情報屋なんてやっている彼だけれど、 別に連日して目ぼしい情報を仕入れられるわけでもなくて、 彼がそんな風に言うのは、滅多にない事だったりする。 けれども、言ったジェイは言葉に反して、 フっと表情を曇らせた。 「ない訳では・・・・」 「ん?」 「なかったん・・・ですけどね、」 「・・あんまり嬉しい情報じゃなかったんだ?」 言うと、ジェイは少しだけ視線を逸らした。 ああまったく、 彼は時折、仕入れた情報に対して、こんな表情をするのだ。 「・・・・ジェイってさ、」 「はい?」 「結構、馬鹿だよね。」 「なっ・・・・・・」 明け透けもなく言い放った華楠に、ジェイは破顔して けれども当の華楠はといえば、気にした様子も全くなく 言葉を続けてみせる。 「物知りなのは良いことだと思うけどさ、 世の中、知らなくても良い事なんて、たくさんあるじゃない。」 なんでそれを、あえて知ろうとするかな。 言えばジェイは、呆れた様な表情を返してきた。 「別に、無難な知識で生きたいなら、それで良いんじゃないですか。」 別に、それだって悪い事ではないですよ、と ジェイが言うのに、それはそうなんだけどさぁ、と華楠>。 「納得いかないわ・・・・」 難しい顔をして言う華楠に、ジェイはいよいよ溜息を吐いて 「己の欲と興味を満たしてくれる物にしか、人は執着できない。 要は、僕と貴女の興味の違いでしょう」 「うわぁ、それはそれでなんか寂しい・・・・」 何か通じ合えてないなーと、か。 言うけれども、同じ人間なんていないんですから、 興味の違いも当然でしょう、だそうで。 まあ、御もっともではある。 「人付き合いだって、同じようなものでしょう。 自分に対してどれだけ満たされる言葉と行動をしてくれるか。 人間なんて、利害に生きる生き物ですよ。」 恋愛感情は、ただそれの延長線上です。 言い放つジェイに、思わず引き攣った顔を隠そうともせず、 「なんか・・・ジェイに好かれる人は苦労しそう・・・・」 「・・・・どういう意味ですか」 「そういう意味ですよ。」 「・・・・言っておきますけど、あくまでも理屈の話ですからね」 「んー?」 「そうじゃなかったら、有り得ませんからね、 僕が貴女を好きになる、なんて事。」 「・・・・・・はい?」 ジェイに言われて、引っ掛かる所は多々あった筈なのに、 思わず言葉を失ってしまった自分が悔しい。 何とも言いかねている自分に向かって、 ジェイは小憎たらしい程の笑みを向けた。 「せいぜい苦労してくださいね、華楠さん」 「な・・・・・・」 言葉を失って、言い返したいのに頭は働かなくて、 「う、受けて立ってやるわよ・・・・」 最終的に言った言葉に、満足そうだったジェイの笑みが 何とも悔しいところだった。 理屈だけじゃ収まらない、だから君が好きなんだ |
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