―― 何てことだろうと、思った。





人間末期かもしれない






煩くて鬱陶しくて、どうしようもないあの人にあったのは、一年ほど前。


まだ海は荒れていて、光の柱だの、蒼我だの、メルネスだの、
そんな単語で世が慌ただしかった頃。



一年前に煩かったあの人は、
今でも変わらずに煩くて鬱陶しくてどうしようもない。

むしろ一年の年月が祟って、余計にそう感じる。



厄介な人で、どこまでも喧しく、それだと言うのに―――・・・・・




「ジェイ、どうかした?」



小首を傾げて言うその人に、意識は急速に現実へと引き戻される。

フイっと視線を逸らし「なんでもありません、」と答えれば
んん?と、首は尚、地面と平行に近くなった。



「私、また何か怒らせるようなことしたっけ?」



眉間に皺が寄ってるんだけど。


言って額を突いた手の平を、
「やめてくださいよ」と素っ気無く振り払った。



ムゥっと不機嫌そうな彼女を横目で見やり、
重たい溜息を、深く、深く、肺の底から吐き出す。



「・・・・・人間終わったかな、僕。」


「・・・・・・なんとなく、言いたい事は解った。」



流石にちょっと失礼じゃない?と腰に手を当てて、彼女。



だって仕方ないでしょう、とは心の中で毒づくのみで、
彼女に伝わらないだろう事等、重々承知だ。



町並みは夕暮れで、冬の太陽は沈むのが早い。


朱から藍へのグラデーションも、次第に濃いに暗いがやや勝り


一番星に、二番星。


輝く星も、増えてくる。



そんな空を見上げて、また、溜息。



「帰りますよ、さん」


「え?ああ、うん。」


「・・・・・・送っていきます。」




ボソリ、


呟いた言葉を、彼女はしっかりと聞いていて
嬉しそうに笑うその顔から、再び視線を外した。


夕日に照らされて、自分の表情が見えていないよう祈りながら。


差し出した手に、重ねられた手の平は、
お互い少し火照っていて


顔を見合わせると、彼女は笑い、自分はまた、眉間に皺を寄せて



――― なんてことだろうと、思うのだ。






(でも、先に好きって言ってくれたの、ジェイだよね。)
(だから余計に、思うんじゃないですか。)

((そろそろ病気の域じゃないかな、))