別に何があるってわけじゃなくて 例えばこうして歌を唄ったり 昨日と違う『特別』は特になくて、あるとすれば、 何も変わらない日常だ 昨日と全く同じでもないけれど、笑ったり、怒ったり、 そんな事が続く毎日 呆れ返る程に平和なこの世界は、 もしかしたら、そう思うのは自分だけなのかもしれないけれど、 少なくとも人々は生きて、 そして時に何かしらの関係を持ちながら生活していた 私はそれを、平和であると認識する。 ―― それが必ずしも、幸せであるとは言えないけれども の口から、歌が零れる 陽気で、明るい歌だ それを唄うの表情も、自然笑み、歌声も弾む。 そして、それを聞くチャバの表情もまた、 自然、笑顔になっていた ゆっくりとリズムを刻むように、チャバの、の身体が揺れる やがて歌が止めば、チャバはニッコリと笑って手を打った 「上手いね、」 「あはは、お世辞言っても何も出ないよ」 口ではそんな事言うけれど、照れて緩んだ顔では説得力もない チャバは「本当にそう思ってるよ」と、屈託なく笑って付け足して 彼が嘘を付くのが上手でない事くらい知っているから 念を押されるようにそんな事言われなくても、充分に承知している だからこそ、照れ臭くて誤魔化すのを、彼もまた知っているのだ。 目の前には、細く流れる綺麗な川 街中を巡る水路の一端で、 夏になれば子供が遊んでいる姿も見られる。 けれども、流石にまだ春の駆け出し、水も冷たいこの季節に そんな自殺行為をしている人間は見受けられなかった。 街の中心からも離れた此処は、自分達だけでひっそりとしていた。 それは、夏の喧騒を知っていれば寂しいものであったけれども 自分の心情からしてみれば、ちょっとばかり嬉しいもので だってこの街の中、2人きりに慣れる場所と言ったら、そうは多くないのだし。 「もうすぐ日が暮れるね、風が冷たくなってきたみたいだ」 「そだね、そろそろ皆の所に戻った方が良いかな。」 夕飯の準備もあるしね、とが言って、 けれどもチャバが、それを制した。 不思議そうなに、今度はチャバが、少し照れ臭そうに笑う。 「もう一曲、聴きたいな。」 そこに、暗に込められた意味を見出す自分は、 ちょっと逆上せているんだろうか 『もう少し一緒に居よう』なんて、思い違いも良い所だろうか それでも、唄う 彼が聞きたいと言ったから、唄うのだ 「良いよ、何が良い?」 「あれは?この間歌ってくれたやつ」 「ああ良いね、じゃあアレで。」 そう受け答えて、歌が再び、唇から零れ落ちてくる 高いソプラノの音が、暮れかけの空に消えていく 先程とは打って変わった、ローテンポの曲調 連ねる言葉は、甘い囁き 恋人へ向けるためのその歌は、 ゆったりとひっそりと目の前の彼に向って響くけれど 今の自分たちに、その歌は少し似合わなくて、不恰好。 チャバ自身は、目を閉じて聞き入っていて、 それは嬉しいものだけれども、果たして分かっているのかいないのか。 考えても仕方ないから、は唄う 高い一音一音が、丁寧に撫で上げる様に伸びていく 歌が止めば、チャバは再び拍手をくれた やっぱり、ちょっと照れ臭い 風が吹いて、流石に寒いなぁとぼんやり思って チャバも「じゃあ帰ろうか」と呟く キラキラと輝く、朱色交じりの銀の水面を見つめて頷く 少し、寂しい気はしたけれど 「今日の夕飯は、何かな」 言いながら、ごく自然に手を繋ぐチャバに驚きながら 「・・・・何が良いかな」 「たまには、オイラも手伝おうか?」 「うーん・・・まあ野菜剥き位なら、手伝ってもらえるけど」 「は手際良いからなぁ」 「もうこれは慣れだよ、慣れ」 言いながら、笑いながら さり気無いエスコートを受けて、帰路を行く 幾つかの言葉を交えた後に、チャバからのリクエストでまた唄う そろそろ喉が疲れた気もするけれど、チャバが喜ぶから唄う 「・・・好きだよ」 その言葉の向う先が、自分の唄う歌へだと分かってはいるけれど それでも自然と頬に熱がたまっていく自分は、やっぱり逆上せているんだろう 「どうかした?」 「・・・どうもしない」 そんなフリをするしか出来ない 繋いだ手は温かい。熱いほど。 返すべき言葉は、喉に詰まって出て来ない 仕方ないから、今日何曲目かの歌を唄った 唄う歌は、愛の歌 彼に向って、伸びて――伸びて――伸びて―― 彼を通り抜けてしまうけれども、瞬間、振り返って微笑んだ彼に 少しは届いているのかな、なんて その時、何となく強くなった繋ぐ手の力が、肯定してくれているような気がした |
チャバ夢は夕焼け背景が多い不思議。
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