空に例えるのが、一番正しかったと思う。 彼の透けるような髪の色も勿論だけれど、 雰囲気とか、そういうもの全てが。 あまりにも馬鹿な事をしでかさなければ、 彼は基本的に、自分の事を受け入れてくれて 例えるなら、自分は空を気ままに漂う、雲だった。 彼の贅沢過ぎる程の優しさに、甘えて、我侭ばかりで 空がなければ漂えない 自分はあくまで、雲だった。 それなのに、ねえ どうして君は、此処にいてくれないんだろう――― 「空・・・・ですか?」 あの日彼は、不思議そうに首を傾げて、言ってきた。 彼を空みたいだと言った自分に、きょとんとした表情で。 「駄目だった?」 「いえ、駄目じゃないんですけど・・・・」 そこで、彼は困ったような顔をして 「俺、そんなに器用じゃないですよ?」 「?」 「空みたいに、沢山の人を見守ったり出来ませんし。」 俺は、俺の大切な人を一人守るだけで、精一杯です。 そう言って、そっとその手で髪に触れて、小さく笑った、彼に。 ―― ああ、やっぱり空みたいだなと、思った。 今はもう、彼は此処にいなくて、 真っ暗に沈黙したパソコンの中へと、消えてしまった。 さようならも言えないまま、彼は唐突にいなくなってしまって それは自分にとって、なんら変わりない『別れ』であったけれど それは自分にとって、とても異質な『別れ』でもあって ―― 空を取り上げられた雲は、一体どうしたらいいんだろう フと、窓の外を見やったら、閉め忘れていたカーテンの向こうは もう既に暗く闇を落としていて 開け放したままの窓が、冷えた夜風を部屋に送り込む。 「・・・・・・寒い」 もうこんな時間か、と時計を見やって、溜息を吐く。 窓を閉めるために立ち上がり、 何となく見上げた空に覚えた、既視感。 星も、月すらも見えない暗闇 そんな、寂しい夜空。 何故だろう、あの日真っ暗になってしまった パソコンのブラウザが頭に浮かぶ。 「カイト・・・・・」 何となく、呼んだ名前。 夜風が一気に舞い込んで、 あの日の彼の指先みたいに、髪を優しく撫で過ぎる。 「――― ああ、そうか」 そこでようやく、気付くのだ。 フとして気付いた、それはまるで、思い付きの様に。 「カイトは、夜空になったんだね」 こんなに暗い、夜の空に こんなに寂しい、夜の空に ―― それなら私は、星になる。 彼の腕の中、君だけを見つけて輝く、星になる。 窓の外、身を乗り出して 夜の風の中、そっと 身を委ねてみた―――・・・・・ |
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